「それ大事に使ってね」
 日下くんが指差したバックの中に入っている浣腸液の事だ。もちろん彼には小夜の病気のための治療薬だと信じ込んでいるのだが……
「ええ、ありがとう……今日は面白かったわ」
「ああ、またね」
 彼は小夜の事を心配してくれているのだから、悲しくなる必要もない、でもどうなのだろう彼と一緒になる未来を考えた時に、きっと彼にバレない様に今以上の責め苦が行われるだろう。
「それでも、その未来は……」
 タクシーが去り、小夜はマンションのエントランスへと向かいながら覚悟の様なものを決めていた。
「日下くんには……絶対にバレちゃいけない……」