「いま帰らなかったら、コテツがいつ手放してくれるかわからんぞ」
 その通りだ、コテツが帰って来て犬小屋に残っていたら。
「師匠にその姿を見せたいってんなら残っててもいいがな」
 手を振って師範代は道場へ戻って行った。
 ズキン……ズキン……
 また、鼓動が早くなった。
 そう、逃げ出さないといけない……