小夜は何とかその日の病院勤務に間に合い、しかも自分の診察室へと急ぎ足で移動していた。
「もう、早くしないと」
 オペには間に会う、しかし早く洗浄してしまわないと気持ちが悪い事この上ない。
「おや?」
 共に医志團というバンドを組む麻酔科医とすれ違った時、ベチャットの汚濁液が最悪の状況で効果を表した。
 クンッ……
 その香りは甘いと表現するべきかもしれない、しかし実際の匂いとは違い本能に影響を及ぼし甘いと感じさせているだけなのだろう、小夜から発せられたその香りに普段から小夜に対しての隠して来た想いを狂暴に表面化させる力があったのだ。
「小夜先生」
 淫気とも呼ぶべき恐ろしく煩わしい代物だった。