亡霊の住む家 5

『次女・雪乃 B』

(おぉ……美しい……!!)
 雪乃の秘部を見るのはこれが二度目だが、その感激は以前の比ではなかった。
 快楽に開花して花びらを薄く開いたクレヴァスは、悦びの蜜を流して薄いピンク色の内奥を覗かせ、恥ずかしそうに息づいていた。
「は……ずか……し……」
 正面から顔を逸らし、両方の掌で顔を隠して雪乃はふるふると震えている。

『よしよし。出来たではないか。それでいいのだ、雪乃……とても綺麗だぞ……』

「はずか……しいです……言わ……ないで……」

『恥ずかしがる事など、ないと言っただろう?』

「だって……だって、こんな……恰好……」
 雪乃は足首に下着を引っ掛けたまま、大きく脚を開いていた。──私はそれを正面から覗き込み、涙を流す雪乃を目の前で眺めている。

『ふふ。私しか見てないから大丈夫と言ったではないか……それとも、やはりここで止めるか?』

 はっ、と、雪乃の表情に焦りが走った。雪乃は私の言葉を遮るように、早口でまくしたてる。
「ち……っ、違いますっ、私、そんな……つもりじゃ……」

『そうか……では、私の言う事を聞くのだな?』

「…………はい……」

 雪乃は恥ずかしそうに、目を伏せながら答えた。
 さて、それでは調教を開始するとするか──まずは、雪乃に誰が主人なのかを教え込まなければならない。

『では、これから私の事は御主人様、と呼べ。分かったな』

「え、でも、アキラく……」

『分かったかっ!!』

「は、はいっ……わかりました、ご主人……さま……」
 突然の大声に雪乃はびくっと震え、恐怖の入り混じった表情で答えた。

『そうだ……雪乃は私の物――所有物になるのだ。だから、私の言う事には絶対に従わなければならない。分かったな』

「はい……ご主人さま……」
 雪乃は幾分不可解そうだったが、逆らう意思は無いらしい。ぎこちなくだが、雪乃は私の言葉に頷いて微笑んだ。
 ──まずはこうして、雪乃の意識から件の男を切り離さなければならない。そして、彼女の恋愛感情をアキラとかいう餓鬼からすり替え、そこに収まろうという作戦だった。

『……さぁ、続きだ。その両手を剥がせ』

「うぅ……」
 雪乃は顔を覆っていた両手を動かし、恐る恐る手を下ろし始めた。

『先刻と同じように、触れ』

「……はい……」
 雪乃の指は震えながら秘部に近づき、まるで雛鳥を触るかのように、そっと触れる。
「んふ……っ!!」
 触れた瞬間、傍から見ていても分かるほど、雪乃の身体に戦慄が走った。
 つぅっ、と愛液が会陰に流れていく。
「は、あ……」
 雪乃は、触れたそのままの状態で、しばらく震え続けていた。

『おいおい、その程度で手を休めるな。もっと手を動かせ』

「は、はい……う、う……」
 程なく雪乃の指は動き始め、くちゅ、くちゅと淫靡な音をたてる。
 サーモンピンクの襞に白い指が絡みつき、透明な樹液を滴らせていた。荒く乱れた雪乃の呼吸が、静寂の部屋を満たしていく。

『そうだ、そう……綺麗だぞ、雪乃……』

「は……はずかしい、です…………うぅっ!!」
 雪乃の指がクリトリスに到達した瞬間、雪乃は消え入りそうな声をあげて身体を引き攣らせた。
「…………!?」

『そう……そこだ……そこをもっと強く擦るんだ……』

 私はここぞとばかりに、雪乃の耳に声を吹き込む。
「う、ん……んんんっ!!!」
 雪乃は言われた通り指を動かし、そして再びか細い悲鳴をあげて打ち震えた。
 薄いピンク色の包皮に包まれたクリトリスは、雪乃の指先に蹂躙されて様々に形を変えていき、時折その内奥の本体を──より薄い、白に近い桜色の芽を覗かせている。

『くっくっく……気持ち良いだろう、雪乃?』

「はっ、はいっ……すっごく、きもち、いい……です……」

『じゃあ、今度はその部分を下から、めくるように擦ってみろ……』

「うう、ん……あ、あああっ!!!!」
 白い指先が淫核の本体を直撃し、雪乃は全身を跳ね上げた。

『そうだ、そう……』

「く……っ、うぅ……うあああっ!!!」
 雪乃の指は、貪欲に快楽を追求するように動いていた。初めての自慰──誰しもが体験する、快感への好奇心と欲求。雪乃の場合は、それが最悪の形で訪れてしまったのだ。

『不幸な奴だ……くくく……』

「あっ、あああっ、ごっ、ごしゅじん、さまぁっ」

『何だ?』

「あっあのっ、た……助けて、下さい……このままじゃ……おかしく……」

『駄目だ』

「そんなぁ……あっ、あああっ、怖い、怖いよぉ、な……何か、きちゃうよぉ……」
 ──そろそろイクか。では、最後の仕上げをしてやろう。

『手を止めるなっ!! もっと強く擦れ──もっと強く、早く、痛いくらいに!!』

「うあ、あああああっ……ああああぁぁぁ……」
 雪乃の指は、ピンク色の肉襞の中を無茶苦茶に動いている。桜色の真珠は既に二本の指に包皮を捲り上げられ、その可愛い全身を露にしていた。
 雪乃は艶かしく腰を浮かせて蠢かせ、切ないかすれ声で喉を震わせ、その口元からつぅっと涎を洩れさせていく。
「あ……ご、ご主人さまご主人さまぁ……」
 くちゅ、くちゅくちゅくちゅくちゅ……
 淫靡な音が部屋中に響いていた。雪乃は激しく首を振り、切なげに声をうわずらせて己が主人の名を叫ぶ。
「あ……あ……あ!!!」
 びく、びくと腹筋と内腿が震えた。もう絶頂を迎えるという──その、瞬間。

『止めろッ!!!』

「ひっ……!!」
 突然の恫喝に、雪乃はびくりと身を竦ませた。めくるめく快感を中断された身体が、ぶるぶるぶると抗議の痙攣を起こす。
「ど……して……」
 雪乃は身を竦ませた姿勢のまま、切なげに顔を歪ませる。

『私の許し無しに、イク事は許さん』

「イク……って、何ですか……?」

『このままずっと気持ち良くなりたいと思っただろう? それの事だ。──これ以上は私が許さない限り、自分の身体を触るんじゃない』

「あ……そ、そん……な……」
 雪乃は瞳を潤ませる。自分の欲求を押さえるために、その両手はしがみつくようにシーツを握り締めていた。

『イきたいか? もっともっと気持ち良くなりたいか?』

「は、はい……なりたい、です……」
 ここまで言いなりになるとは──雪乃の奥底には、マゾの素質が眠っているのかもしれないな……。私はそんな事を考えながら、雪乃を更に追い詰める。

『では、こう言うのだ。「私はあなたの奴隷です、どうかこんな私をイかせて下さい」、とな』

「え……」

『嫌ならこのままだ。何時までもその欲求を抱えて悶えるがいい』

 思わず逡巡する雪乃に、私は浴びせ掛けるように言った。雪乃は身を搾るように悶えさせ、苦悩と焦燥の涙を浮かべた。
「あ……わた、私、は……」
 ぽろぽろぽろ、と涙をこぼしながら、服従の言葉を口にした。
「私は、あなたの奴隷です……どうか……どうか、こんな私を、イかせて……ください……」

 ──勝った。

 雪乃は溢れかえる欲望に負け、私に服従を誓ったのだ。
 ここまで来たからには、逃がしはしない。絶対にこの少女を、私の性奴にしてやる──身も、心も。
 私は踊り出したい気分を押さえ、雪乃を絶頂に導いてやる事にした。

『──いいだろう。では約束どおり、イかせてやるぞ──思いっきり、やれ』

「あ……」
 その言葉を聞くと同時に、弾かれたように雪乃の両手が動く。刺激を一番欲している──その、妖しく屹立した肉芽へと。

「ひ……っ!!!」
 押さえられていた欲求を一気に開放され、待ち望んでいた快感を爆発的に与えられ、雪乃は突起を押し潰した瞬間に、絶頂していた。

「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

 生まれて初めての絶頂──しかも、他者に行動を操作され、催眠術のように快感を増幅されて、そのショックは文字通りケタ違いになっている。
 雪乃の身体からは、まるでタガが外れたように、信じられないほどの膨大なエナジーが爆発していた。
 エナジーの奔流はそのまま、まるで逆に私を飲み込まんとするように流れ込んでくる。

『うお、お……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』

 視界が歪み、世界が虹色に輝いた。

『はは……』
 私という存在そのものを、揺さぶるような、翻弄するような、凄まじい量のエナジー。
『はっはっは……』
 それらが全部、私の中に流れ込んでいく。私の糧に、私の血肉に──
『……はーーっはっはっはっはっはっは!!!!!!』
 私は無意識のうちに、哄笑していた。力が漲る。全身がエナジーに輝く。あらゆるパワーが、桁違いに使えるような気がした。

「あ……ああぁぁ、あぁぁ……あ、あ………………………………………………」
 雪乃は絶頂の痙攣の中、獣のような叫びを途切らせて気絶してしまっていた。
 それでもその身体は、びくん、びくんと絶頂の余韻に酔いしれている。
 私は満足そうに雪乃の姿を眺め──そして、ある事に気がついた。
『風を、感じる……?』
 握り締めていた拳に、緩やかだが空気が触れる感触を感じたのだ。死んでからこのかた、一度も感じていなかった感触だ。
『まさか……』
 私は半信半疑で、しかし狂おしい期待を込めて、目の前のベッドに手を伸ばした。
 先程と同じように、力を込めて、触れと念じて──

 手は、シーツを掴んだ。

『…………やった……やった、やったぞ!!! くくく、はーーっはっはっはっはっは!!!!』
 今までは触れる事もできなかった女達に──ただ、眺めて間接的に動かす事のできなかった肢体に──
 私は、触れられるのだ。
 この手で、この身体で、女たちを味わえるのだ。
『くっくっく……見ていろよ、女供……みんな私の所有物にしてやるからな……』
 私の哄笑は、いつまでも止む気配を見せなかった。



「……ねぇ、誰かの声が聞こえなかった? お姉ちゃん……」
「えぇ?」
 二人の前のテレビには、ブラウン管を真っ赤に染めるような映画の戦闘シーンが映し出されていた。
「ほら、また……」
「鈴穂ぉ。そんな怖い事言わないでよぉ」
 由佳は鈴穂をしっかと抱き締めてしまう。
「でも、でも……」
「どうせこの映画のモブか何かでしょ……それにしても、出来の悪い映画ねぇ……」
 だったら怖がってないで見なきゃいいのに、と鈴穂は思ったが、口には出さない。
「私、ちょっと見てくる──」
「ダメ!!」
 再び由佳の腕の中にしっかと抱きとめられてしまい、鈴穂はそのまま映画を見続けるしかなかった。
 多分、お母さんがお風呂でビニールマットを擦らせたんだろうな……。
 鈴穂はそう自分に言い聞かせて納得し、姉の手からの脱出を諦めた。



 先程の雪乃の叫び声は、家族に聞き咎められる事は無かったようだ。誰も様子を見に来ない。
 ──それならば、まずはこの娘を頂くとするか……。
 私は、ゆっくりと気を失っている雪乃へと近づいた。
 そっと、その年齢に似合わぬ程ふくよかな胸へと手を伸ばす。
 ふに……
『おぉ……』
 久しく感じる事のできなかった、女の身体。──よもや、再び触れられる日が来るとは思ってもいなかった。

 もう、溢れる欲望を押さえる事はできなかった。私は、狂おしいまでの欲求に身を焦がし、雪乃の身体へと覆い被さった──。



 亡霊の住む家 6 に続く







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