亡霊の住む家 10

『母・法子 @』


 昼間。
 私は娘達がいないこの時間帯を、何をするでもなく漂っていた。
 平日の昼間は娘達が学校に出かけ、何もする事が無いのだ。
(掃除機の音がするな……)

 興味を引かれて階下に下りると、法子がリビングの掃除をやっていた。
 身体にぴったりとした薄地のパンツを穿き、てきぱきと動き回るその様子は、健康的な色気を感じさせる。
(どれどれ……)
 私はちょっとした興味を覚え、法子に近づいた。
 白いパンツには、くっきりと下着のラインが浮かび、大き目なブラウスの裾からは時折ベージュのブラジャーに包まれた豊かな胸が覗いている。
(こうして見ると……法子もあの娘達の母親だけあって……いい女だな)
 今までは3人の娘にばかり興味を奪われていたが、どうせヒマな時間帯だ。ヒマつぶしの意味でもこの女を喰うのもいいかもしれん……私は、そう考えた。
 青い果実ばかりでなく、たまには熟した芳醇な味を楽しむのもいいだろう。

 法子は、何も知らずに掃除機を動かし続けていた……。



 その夜、法子は悪夢にうなされていた。
「う……んん……」
 掛けていた毛布はとっくにめくり上げられてしまい、今は申し訳程度に腹部にかかっているだけだ。
 今夜は夫はいない。出張で明後日まで帰って来ないのだ。
 法子は広いダブルベッドにの片側に、鈴穂と同じように行儀のいい寝相で眠っていた。
 ──夫がいない今夜がチャンスだ。私は胸を躍らせながら、法子の許へと近づいていく。
(さて、味見させて頂こうか……)
 ふわりと肩紐がずらされ、法子の胸をゆるく覆っていたネグリジェがめくられた。
 露になった形のいい乳房が、ぷるん、と揺れる。張りと弾力を保った美しいラインだ。
(素晴らしい……)
 私はそっと、その柔らかそうな乳房に手を伸ばした。
「ん……」

 法子は、微かにうめいて身をよじる。乳房が妖しい踊りをはじめていた。
 私の実体化した、半透明な手に掴まれて形を変え、乳首が凹む。寝汗にきらきらと光る膨らみに指型が影をつくっていた。
「んん……」
 優しく、丁寧に努めた愛撫に、法子の身体は反応し始めていた。指先にくりくりと玩ばれた乳首が、ぷく、と膨らんでいく。
『改めて見ると、綺麗な身体だな、この女も……』
 法子の身体にはシミ一つない。余分な贅肉も見られない、瑞々しい身体を保っている。この年齢にしては稀有な事だ。
 私は改めてこの女の価値を確認していた。あの淡白な夫には勿体無い女だ。
『どれ……お前も、私のコレクションに加えてやるとしよう……』
 本格的に法子を味わうべく、私は唇と舌を実体化させて乳首に這わせた。
「ん……!」
 ぴちゃ、と乳首の先を舐められ、法子の腰が反りかえる。微妙な乳腺の味が、口の中に広がった。
『どうだ……感じるだろう? もっと快感を素直に感じろ、そして全身で受け止めろ……』
 ぬる、ぬる、ちゅく……ざら、ざらり、ざら……
「んう……ん……」

『……そうすれば、お前の性感は何倍にもなる……とびきりの悦楽を味わわせてやるぞ……そうそう、そうだ……』

 ざらり、ざらり、くりゅ、きゅっきゅっ、ちゅぅ……
「んっ、ん……!!」

 巧みで繊細な舌使いに唇の刺激も加わり、法子の呻き声は次第にそのトーンを高めていく。
 熱くざらついた愛撫は、法子の熟した乳首をみるみるうちに屹立させてしまった。
「は……ぁ……」
 むくむくと天を向いた乳首に、目に見えぬ唾液がぬらぬらと纏わりついている。
 法子は無意識のうちに、悩ましげに前髪をかきあげていた。
 唇から、どうしようもなく嘲笑が洩れる。
『……どうだ? 気持ち良いだろう? ──さぁ、次は下だ……』
 私は法子の両脚を念力で持ち上げ、薄地のパンティに手を掛けた。
『法子の「女」を味わうぞ……嬉しいだろう?』
 腰から先を持ち上げられ、法子のパンティはするすると簡単に脱がされていく。
 法子の美しい素肌を目に楽しみながら、私はパンティを足の先から抜き取った。
『さぁ、ご開帳だ……』
 次いで、法子の両脚をこじ開ける。さしたる抵抗も無く脚は大きく広げられ、法子の成熟したクレヴァスが露になった。

(おぉ……これが法子の「女」か……三人も娘を産んでいるとは思えない、綺麗な肉襞だ……)
 法子の秘部は色素の沈着こそ見られるものの、まるで処女のような綺麗な形を保っている。
 私は、まじまじとその様子を眺めてから、その熟した果実に念動の手を向けた。
『どれどれ……』
 くち……
「う……」
 指に開かれた秘裂の中心に、熱い息がかかる。
「う、ン……!!」
 その刺激に、法子の瞼がぴくぴくと動いた。
(起きるか……)
 ここで起きられてしまっては意味がない。私は、力を入れて法子の耳元に囁いた。
『起きるな……このまま、眠ったまま感じていろ』
「ん……!!」
 法子の瞼がぴくぴくと震える。起きようとしているのに起きられない──そんなジレンマが、法子の中で暴れているのだろう。
 私は法子にちょっとした儀式を行う事を思いつき、上半身全体を実体化させた。

『くっくっく……そうだ、そのまま私の舌の虜になるがいい……お前は、もう私の物なのだ……』
 私は美しい法子の寝顔を見つめながら、その頬にそっと手を触れる。
『お前を私の所有物の一つに加えてやる、光栄に思うがいい……この世の者には与えられない快楽を味わわせてやるぞ……』
 私は法子の頤をくい、と持ち上げ、その唇を奪った。
「んう、う、ん……」
 ちゅく、くち、ぬる、ちゅ……
 半開きになっていた唇に舌先を割り込ませ、法子の舌を絡め取る。とろりと柔らかい舌だった。
「ん、ん、んんん……」
 にゅる、ずちゅ……くち……
 思う存分に法子の舌を味わうと、再び法子の耳に口を寄せる。
『お前は良い女だ……まずは少し味見をして、次は……』
「ん……」
 法子は、苦しそうに眉をひそめた。
『──おもいっきり可愛がってやる……くっくっく……さあ、お前の蜜を味わうとしよう……』

 くち、という音をたて、法子のクレヴァスが開かれる。サーモンピンクを保った肉襞が、私の目の前に広がった。
 指を使えばその指に隠れる部分ができてしまうが、念力を使えば大きく開かれたラヴィアも、はっきりと見る事ができる。
 だが、感触を味わう為には実体化することが必要だ──私は、法子の秘部に吸い付いた。
 ざらり。

「んぅ……!」
『美味い……娘達とはまた違う、芳醇な……熟れきった味だ……』
 大きく広げられた両脚の中心で、法子の花園が踊るように揺れていた。しばらく男性を受け入れていなかったその身体は、意外なほど素直にその反応を見せ始めていく。唇から、忍び笑いが洩れた。
『うむ、いい感度だな……』
 じゅるっ、じゅる……
 湧き出してきた法子の愛液と、霊体の唾液が混ざり合う。大きく拡げられた陰唇の奥に、爛れたように真っ赤な秘肉が覗いていた。
 舌はその中へと、ゆっくりと差し入れられていく。法子の背中はもう、ブリッジしたように反り返っていた。
「っは……ぁ……」
 ひとまず内部への侵入を止めた邪悪な舌は、今度は秘裂の上部へと蠢いていく。濡れて光るラヴィアを掻き分け、ゆっくりと小さな突起に辿り着いた。法子の身体がびくり、と跳ねる。

「っあ……っ、あ……!!」
 舌が包皮を上から舐め上げた瞬間、ぞくぞくぞく、と法子の全身に鳥肌が立った。
 とたんに舌は激しく動き始める。
 五本の指がサーモンピンクの包皮をめくり上げ、露になった法子のクリトリスに容赦のない愛撫が襲いかかった。
 ちろちろと小さく震えるようにピンクの突起が踊り始める。
「はあ……あああ……」
 法子の顔は喜悦に歪んでいた。熟しながら、少ない夫婦の交渉に欲求不満を抱えていた法子は、的確で熟練した舌技に打ち震えていく。
 女の身体と弱点を知り尽くしているその愛撫に、法子は抗う術を持っていなかったのだ。
 ざらり、と舐め上げられ、押し潰すように転がされ、つつかれ、そして吸われる。みるみるうちにクリトリスは充血し、舌はその硬い感触を思うがままに味わっていた。

 じゅるり、じゅるりと、淫靡な音が部屋に響き渡っていく。
「うぁっ……あぁっ……ああぁっ……」
 存在しないはずの舌に玩ばれ、クリトリスはまるで妖しいダンスを舞うかのように蠢いていた。
「あ……あ……あ……っ」
 程なくして法子の太腿に緊張が走りはじめる。首が反り返り、腰がせり上がり、白い頤が月光に照らされた。
『イクか……』
 眉間には憶悩の皺が寄り、口はぱくぱくと魚のように動いてその悦楽を訴えている。
 かくん、かくんかくんかくん――法子の腰が、細かく前後に揺れ始めていた。
『では、仕上げだ……さあ、イけ! イけ!!』
 法子の様子を見て取り、舌の動きが一層激しくなった。
 充血しきったクリトリスをこそげ落とそうとしているかのような激しさに、法子はついに陥落してしまう。


「あっあ……っ、…………はぁぁあああああああああああぁぁぁぁーーーーーーーーー……っ!!!!!!」

 汗だくの身体にぶるぶるぶるっ……と痙攣が走り、法子は身体全体を反り返らせて愉悦の声をあげた。
 イッてしまったのだ。
「あぁぁ……あぁ、あ……はぁ……ぁ……」
 びくん、びくん、と絶頂の余韻が続く。
 菊門と膣口が、物欲しそうにひくひくと蠢く。
「あぁ……ぁ……ぁ…………」
 脱力しきった身体をしどけなくベッドに投げ出し、法子はぶるる、ぶる、といつまでも痙攣を続けていた。



 そして、その痙攣も収まってしばらくした頃──。

『──どうだ、法子? 禁断の快楽の味は……これを味わってしまった以上、お前はもう逃げられん……』
「……はぁ、はぁ……はぁ……」
『もうお前の身体は、私の舌の味を知ってしまったのだ……どんなにもがいても、もうこの快楽を忘れる事はできんぞ……』
 そう言い、法子の上半身を起こし、再びその唇を奪う。
 ちゅ……ちゅく……
「んっ……んんっ……んう………………ふぅ……」
 甘く、濃厚な法子の唾液。
 熱くねっとりとしたその口腔を、思うが侭に味わう。
 絶頂に導いた時とは別種の征服感が、私の心を満たしていた。



 どさっ。
 口腔内を散々玩ばれ、法子はやっと開放され──次の瞬間、投げ出された衝撃に目を覚ました。
「………………、……!?」

 がばっ、と法子は弾かれたように起き上がる。
『──ふん。呪縛が解けたか。まあいい、今夜はこの位にしておいてやろう……だが良く覚えておけ、お前は──』
「な、なに……!?」
 乱れた寝着を胸にかき寄せ、法子は部屋の中を見回した。実体化を解いた彼の姿は、無論法子の眼には映らない。
「なんなの……!?」
 乱れていた息を必死に落ち着かせながら、法子は身震いしていた。
 剥き出しの下半身、熱く濡れた陰唇……今まで、眠りながらこんなに乱れた経験はない。
 夢心地で味わった、今までとは桁違いの気持ち良さ……。
 法子の頭の中には、ぐるぐるとその余韻が渦を巻いていた。
「わ、私……自分で、こんな……?」
 問い掛けても、答えはない。
 ただただ、夜中の沈黙だけが辺りを支配し、耳はシーンという静音を捉えるだけだ。

「…………」
 漠然とした恐怖に、法子はぎゅっと自分の両肩を抱き締めた。

『──お前はもう、私の物だ……』




 私は呆然とする法子を後にし、他の娘の元へと漂っていた。

(さて、次の段階だが……)
 私は法子の感度が良好だった事を踏まえ、次の段階を考え始めていた。
(自分で、させてみるか……由佳のように……)
 確か、生前に屋根裏に隠しておいた道具の類が、まだ手付かずで残っていたはずだ。
(アレを、使わせてみるか……そうだ、それがいい……)
(それと、この家族はビデオカメラを持っていたな……あれも、使わせて貰うとするか……)
 次の段階は決まった。後は、昼間になるのを待つだけだ。私は、残っている貴重な時間を他の娘の調教に費やす事にした。

(それにしても……)
 私はじゅる、と、霊体の身体のままで舌なめずりをしていた。
(美味い蜜だった……暇潰しのつもりが、大当たりを引いてしまったかな……くっくっく……)
 熟した女の身体の中でも、法子は最高の部類に分類できる。
 あれほどに最高のプロポーションを保ち、貞淑に過ごし、なおかつ熟した身体を持ち、感度の良い上玉の女など、私が生前の間にも見た事がなかった。
(これは……十分に楽しめそうだ、な……くくく……ははははは……)
 私の笑い声は、しばらく止む事もなく無人の廊下に響いていた。


 亡霊の住む家 11 に続く




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