亡霊の住む家 17

 『母・法子 F』


 そして、今日も朝は廻る。

「おはよう、お姉ちゃん、お母さん」
「……え、あ、お、おはよ」
「え、ええ、お早う鈴穂。早くご飯食べちゃいなさい」
「はーい……あれ、お父さんは? 確か今日の朝帰ってくるって」
「ええ。それがさっきになって電話があってね──遅くなるって」
「ふーん……」

「……さあさ、あまり時間ないわよ、早く食べちゃいなさい」
「そういうお母さんもお姉ちゃんも、ちっとも食べてないじゃない」
「あ、うん……そうね、早く食べなくちゃ」
「う、うん……そうだよね」
「……?」

 いつもの家族の朝食。交わされる聞きなれた言葉、流れる穏やかな空気。
 だが、その平和な風景はどこか、いつもと違っていた。

「う、ぅ……」
「……?」
 鈴穂は、その奇妙な呻き声に箸を止める。
(なに……?)
 何かが違う──直感的に、そう感じた。
 目の前に映るのは、いつもと同じ朝食の風景だ。
 でも──。
(変だな……)
 忙しくも賑やかな食卓──それが、今日は奇妙に静かなのだ。

 だが、鈴穂は気付かない。テーブルの下、法子と雪乃が、両脚を大きく開いている事を。
 二人とも、下着など着けていない。テーブルクロスの下に曝け出された二つの性器が、震えながら樹液を滴らせている。
 じゅる、じゅる──
 くち、くち、くち──

 見えない舌と指は、その花弁を舐っていた。



「……お母さん、大丈夫?」
「べ、別に……何でも、ないわ……」
「でも……昨日も風邪っぽいって言って早目に寝ちゃったじゃない」
「あぁ……そう、だったわね……やっぱり風邪かも知れないわね……く……」
 苦しそうな息遣いの中、法子の声は必死に平静を装っていた。
 娘達に見破られる訳にはいかない──彼女等まで、巻き込む事になる。
「ふぅ、んん……」
 だが、法子の必死の努力も空しく、巧みな舌はあっけなく彼女から呻きを洩れさせてしまう。
 彼の調教で敏感になった法子の女芯は、全身が蕩けそうな程の快感を法子に流し込んでいたのだ。

(あぁ……)
 雪乃も必死で快楽と戦っているが、こちらは幾分か、声を抑える事ができている。
 鈴穂と由香の注意が逸れている為、見破られる心配は無さそうだった。
「はぁ、ぁ……」
 それでも、悩ましいため息が、どうしても口から洩れてしまう。
 しかし、先刻まで悦楽に中空を見つめていたその瞳は、今は目の前の母親に向けられていた。──厳しい視線と共に。
  
 雪乃と法子は、まだ互いが自分と同じ、「男の所有物」となった事を、知らない。
 だが雪乃は、悟ったのだ。自分と同じリズムで呻く母親に──その、事実を。

「──ねぇ、本当に大丈夫? お母さん」
「えっ、ええ……大丈夫……よ…………あっ……」
 法子はそんな雪乃の視線にも気付かず、ただただ与えられた快楽に溺れていく。

 恥ずかしくて、決して子供達には知られてはいけない禁断の快感だったが、法子は幸せだった。
 自分の所有者が、自分を愛撫してくれる──それは、愛される悦び。
 法子は自ら両脚を更に大きく広げ、性器を前にせり出していた。



 ぴちゃ……ぴちゃ……
 密やかな水音がテーブルの内部を支配している。
 テーブルの上では、平和な家族の会話が続いていた。──無論、法子と雪乃は簡単な受け答えしかする事は出来なかったが。
 これこそ、私が求めていた性奴達の姿なのだ。
 貞淑な妻を──あるいは無垢な娘を演じながら、内面では快楽にドロドロに熔かされている、淫靡な顔を隠し持つ女──それこそが、私の理想だった。
 二人はぎゅっと膝を掴み、声を洩らすまいと身を固くしている。
『くっくっく……』
 だが私がクリトリスを一舐めしてやると、たちまち腰全体をがくがくと震わせて呻き声を洩らし始めてしまった。
「ふ、ぅ……」
 愛撫を始めて10分以上になる。もう二人の身体も限界を迎えているだろう。どちらにしようか、ここは──
『法子……イカせて、欲しいか?』
「はっ……はい、御主人様……」
 法子は小声で、そう答えた。
 肌の上気も、荒い息づかいも、既に子供たちを誤魔化し切れないほどに大きくなってしまっている。この辺が限界だろう。
『仕方が無いな……トイレに行く事にしろ』
「は、い…………あ、えーと、私トイレに入ってくるわね」
 慌しく法子がテーブルを立つ。一方の雪乃は、ぎゅっと自分の膝を握り締めた。
「ご、ご主人さまぁ……私、私もう……我慢できない…………」
『心配するな、雪乃。今日は学校を休め、いいな? もう少ししたら思いっきり可愛がってやる』
「は……ぃ……」
 雪乃の両膝が、がくがくと震え始める。こちらも消え入りそうな想いで疼きに耐えているのだろう──が、ここで歓喜の声をあげさせる訳にも行かない。
 ここまで火を付けられながら放置され、しかも自慰を禁じられている……雪乃の理性も崩壊寸前だろう。だが……。

 まあこれはこれで、後々の楽しみが増えるという事だ。



 法子は、物も言わずにトイレに駆け込んで来た。
「あぁっ、あぁぁっ、ご、御主人様ぁぁ……」
 もう、限界を超えてしまっているのだろう。覚束ない様子で鍵を掛け、恥じらいも無くぐしょぐしょに濡れた性器を曝け出し、追い詰められたメスの叫び声をあげた。
 剃毛されて丸見えになった女芯が、劣情と疼きに、だらだらと涙を流している。
「は、はやく、はやくぅ……お、お願いします……」
『お願いと言われても分からんな……法子よ、何をして欲しいのだ?』
「あぁ……も、もう、もう……」
 いつものように言葉でも攻めようと思ったが、法子はもうそれどころではないようだ。
 焦らしてやっても良いが、これは私の方が我慢できそうにない。
「お、お願いです、は、早く……」
 そう言いながら妖しく腰を揺らす様子は、男ならば誰でもいきり立ってしまうような、淫靡な光景だった。
 清楚なその顔に浮かぶ淫らな欲望、焦り、そして僅かばかりの戸惑い……どんな男でも、こんな表情をされたら堪らない。
(これほどまでの女を……私は、手に入れたのだ……!!)
 法子の背中に手を回し、抱き上げる。
「あ……」
 そのまま有無を言わさず、その唇を奪った。
「ん、む……」
 蕩けるように、絡み合う舌。欲情のままに、法子も積極的にディープキスに応えてくる。
『ふう……仕方がない奴だ……そのまま尻を上げて便座に両手を置け。……そうだ、もっと脚を広げろ』
「は、はい……」
 上ずりそうな声を抑えつつ、バックの体勢をとっていく法子を見つめる。 
 熟れた、深みのある美しさに、上気した肌の色が加わり、たまらない艶やかさだった。
(これは、徹底的に犯さないと満足できそうにないな……。)

 夫の帰りが遅くなるとは、思ってもみなかったチャンスだ。
 たっぷりと、法子を味わう事にしよう──。



「あっ、あああ……」
 ただ、舐められた。
「ひぃっ、ひぃぃ……も、もう、許して、許して……ぇ…………」
 男の舌が、法子の汗を舐め取るように、執拗に法子の肌を這いまわっていく。
 ざら、ざら、ざらり、ざら……
「あああっ、も、もう、もう……もう、ダメぇぇぇ……」
 法子が泣いても叫んでも、決してその動きは止まらなかった。
 乳首や陰部を避け、脇腹や首筋、背中などの性感帯を丁寧に舐め回していく。
「ひ……っ、やめ…………っ、あああああっ……」
(だ……だめぇぇ、もう、だめぇぇ……)
 くすぐったさと、ゾクゾクと痺れるような快感と──法子は、それだけで上り詰めてしまっていた。
 身体中を散々に弄ばれ、それでも男に「動くな」と命じられたままに動きを留め、どうしようもないままに絶頂への曲線を辿ってしまう。
「ああっ、あああっ、もう、もう、もう……イッちゃう、イッちゃうぅ……」
 だが、男の声は無慈悲に法子に降りかかる。
『まだイクな、法子……まだ、許さん……』
「あああっ、そんな、そんなぁ……」
 ぎくりとその身体を震わせて、法子は悶絶した。
「ど、どうして、どうして……ぇ……?」
 男の含み笑いに、法子は哀願するように問いかける。──その身体はわなわなと震え、必死に絶頂を堪えていた。
『まだだ。今日は新しい快楽を教えてやる。だから今はまだイクな。分かったな?』
「はっ、はいぃ、ご主人、さまぁ……っ」
 ここで絶頂を迎えてしまえば、彼は躊躇いなく法子を見捨てるだろう──そんな意味合いを感じさせる口調だった。
 法子は全身全霊を傾けて身体の疼きを押し留める。
『そうだ……そう、そんなに毎回毎回あっさりとイかれても面白くないからな……くっくっく』
 無言の戦いを続ける法子に、声は嘲るように降り注いだ。
「は──はぁっ、はぁっ、はぁっ、──」
 やっとの事で嵐のような劣情を押さえ込み、法子は必死に息を整えようとする。
『では、そろそろ行くか……』
 だが、そんな法子に男は容赦のない攻めを加え始めた。
「あ──ああっ!!?」
 舌先が、法子の性器への蹂躙を再開する。
 そして……
(な!! なに!?)

 舌先はそのまま、彼女の菊門へと伸びていった。



「あぁぁ!? そっ、そこは、そこは、やめて下さいぃ、うぁぁ、ふわぁぁぁ……」
(だめ、そこは、だめ……)
 異様な感触が法子を襲う。彼女の所有者が舐めまわしている部位、そこは、アヌスだった。
 舌が動く度に、妖しい刺激が法子を揺さぶる。かく、かくかく、と、膝の力が抜けかかった。
「あぁぁ、あぁぁぁぁ……抜けちゃう、力が、力がぁ……は、はっ、はぁぁぁ……」
 舌先が中心に突き進もうとし、妖しい刺激は更にその強さを増していく。
 反射的に、そして無意識に、法子の菊門はきゅっと締まって抵抗した。
『……力を抜け』
「あぁ、そんな、そんなぁ、あぁぁぁぁぁ……」
 だが、彼が言った途端に、本人の意思とは関係なく、法子のアヌスの力が緩み始める。
「あ、あ、あ!!!」
 ぐり、ぐり、ぐり……ず、ずずず……
 その僅かな隙を見逃さず、舌先は僅かだが法子への侵入を果たした。
「うあ、あああっ!! い、いやぁ、いやぁぁぁっ!!!」
 あまりにも異質な感覚──法子は首を激しく振って、子供のように泣き叫ぶ。
 だが、その痺れるような刺激は、一方で急速に法子を虜にしていった。
「あっ、あ……あぁ、いやぁ、いや……ぁ……」
 舌先はそのまま回転し、ぐりぐりと法子の内部へと押し進んでいく。
「はっ、はぁぁぁっ、あ……はぁぁぁぁ……」
 先程とはまた違う、ぞくぞくとした悪寒が、法子の背筋を駆け上った。
 かくん、と膝の力が抜け、そのまま力無く座り込んでしまう。彼は咄嗟に両手を実体化させて彼女を支えた。
「はぁ、あ、あぁぁ……は、入ってくる、入ってくるぅぅ……」
(だ……だめ、こんなの、だめ……)
 法子は身体を支えられた事にも気付かずに、未知の快感に囚われていく。
 今までは排泄器官でしかなかったはずの部位から伝わる、妖しい刺激に。
 ──ざり。
「ひぃ……っ!!!」 
 侵入していた先端が、今度は回転しながら内壁を擦り始める。法子の喉から、再び引き攣った叫び声が上がった。
 次々に襲い掛かる、生まれて初めての刺激に、法子の瞳は理性の輝きを失っていく。
 ざり、ざり、ざり……
「ひぃっ、ひぃぃ…………っ!!!」
 舌は巧みに回転しながら、奥へ奥へとドリルのように法子の中を突き進む。もう舌先は数センチも内部に入り込み、その内壁を舐め回していた。
「あぁ、あぁぁ……」
 ざり、ざら、ざら、ざらり……
『少し苦いぞ、法子──これがお前の味か、くくく……』
「ああああっ!!! いやぁぁぁぁぁっ!!!!」
 排泄物を舐め取られている──法子は一気に正気に戻り、羞恥と衝撃に泣き叫んだ。
 ざら、ざり、ざら、ざり……
「いやぁぁぁ……やめてぇ、やめてくださぁ……っ!!」
 消え入りたいくらいの羞恥心が、その脳裏に植え付けられていく。
 だがそれも――少しずつ少しずつ、痺れるような快感へと、変わっていった。
 やがて舌は、法子のアヌスホールを広げようと膨らみ始める。法子の身体が、再びびくりと跳ね上がった。
「うぁ、あ……お、お願いです、そこは、そこはぁぁ……」
 法子の哀願も空しく、舌はぐり、ぐりと彼女のお尻の穴を広げていく。
 舌のざらつきが、気の遠くなりそうな刺激となって法子の背筋を上っていた。
 羞恥と悪寒と、背徳的な悦びと、妖しい快感とが、ごちゃ混ぜになる。
(あ……あぁ、ダメなのに、ダメなのに……ぃっ!!)
 法子は激しい困惑と恥辱の中、少しずつ我を忘れていった。



 ぐり、ぐり、ぐりり……
 舌は未だ膨らみ続け、無理矢理法子のアヌスをこじ広げる。
「はぁぁ……ぁ……ゆ、許して、もう、許してぇ……」
 にゅるり、と舌が引き抜かれた時には、法子のアヌスはすっかり緩んでしまっていた。
『まずはこんな所か……どうだ法子、菊門を弄られる感覚は?』
「ああ、あ……」
 悩ましいため息が洩れる。
 もう法子は、すっかり新たな快感の虜になってしまっていた。
「うぅ、ん……」
 むず痒いほどの疼きが、今まで排泄器官でしかなかった穴から湧きあがる。
 無意識のうちに、彼女は尻を後ろへと突き出していた。
『くっくっく、そうかそうか。これだけでは物足りないか、淫乱な奴だ』
 彼の揶揄の言葉と共に、菊門に何かが押し当てられる。
「!?」
 法子は反射的に力を込めようとしたが、間に合わなかった。
 つぷり……
「はぁぅ……っ!!!」
 法子の視界に稲妻が走る。ぐりぐりと法子の中へ、中へと掻き進む──それは、男の指先だった。
「!? っ、いや、嫌ぁぁっ!!!」
 何をされているかを瞬時に悟り、思わず仰け反る法子。おぞましい異物の感覚に、半ばパニックに陥って逃れようとする。
 だが先刻の舌攻めに濡れ、そして僅かに力を緩めたその隙を、彼は見逃していなかった。
 ずぷ、ずぷずぷずぷ……
「嫌ぁぁ、いやーーーーぁぁぁ……」
 まるでおたまじゃくしがそうしているかのように、指先で法子の内壁を上下に、上下に掻きながら、指は少しずつ、少しずつ法子の中へと侵入していく。
 人間の指の動きではない──まるで関節の無い軟体動物のように自在に動いて、指は法子のアヌスにのめり込んでいった。
「あ、うあ、うあああああっ、ああああっ、あああああ!!!!!」
『くっくっく。随分とお気に入りのようだな。ここがひくひくと言っているぞ』
 指先が進む度に、法子は口をぱくぱくと動かして悶え狂う。便器を握り締めた両手はぶるぶると震え、膝はがくがくと鳴って全ての体重を彼に預けていた。
 だが、法子の身体が落ちる度に、指先は逆にずん、と法子の中を突き進み、更に法子を仰け反らせる悪循環を引き起こしていく。
「うぁぁぁぁ、あぅああああ、あああぁぁ……」
 大きく開いた口から舌先を覗かせる。法子の叫び声は、もう言葉にならなくなっていた。
 指先はもう根元まで突き刺さってしまい、今度は法子の内側をほぐすように蠢き始める。
 ずぬ、ぬる、ずぬ、ぬる……
「あああぅ、あああああぅぅ、やぁぁぁ、やめてぇぇぇ……」
 法子は拒絶の言葉を喚き散らしながら、指の動きに添って腰を振り始めていた。
 最初は固く指を締め付けるようだった内壁も少しずつ、ぬるぬると滑らかに指の動きを許し始めている。
『そうだ……そう……大分解れてきたではないか……』
「ああぁぁ、ああぁぁ、ああぁぁぁ……許してぇ、許してぇぇ……」
 法子は、もう喘ぎ叫ぶ事しかできなかった。
 ヌルヌルと指は動き回り、もう一方の手はさわさわとお尻をくすぐるように撫で回す。
 舌先は時折ぬるりと膣口からクリトリスまでを舐め上げ──法子は、完全にそれらに囚われてしまった。
(あ、あぁ……)
 もう、家事の事も家族の事も頭から吹き飛んでしまっていた。あるのはただ未知なる快感への恐怖、期待、疼き──
 ぬぷり、と指が引き抜かれた時、法子は喪失感すら感じていたのだ。
(あ、あ……も、もっとぉ……)
 無意識のうちにそんな事を考えている自分に気付き、かぁぁっと顔を赤く染めていく。
『くっくっく……物足りないか?』
「あ……!!」
 彼に心の内を読み取られ、法子は羞恥の色で顔を更に濃く染めた。
『では、もう少し広げるぞ……今度は、指二本だ……』
「え、え……? あ、あああっ!!!」
 法子が聞き返すよりも早く、彼は今度は人差し指と中指で彼女のアヌスを埋めていた。
「ひぅ……っ、くぅぅ……」
 もう抵抗する力も失せ、指はずぶずぶと法子の中に潜り込んでしまう。
「くぅぅ……ぅああああ……」
 無理矢理こじ拡げられていく感触に法子の背筋は仰け反った。二本の指は容赦なく内壁を抉り、出し入れを繰り返してその筋肉を解していってしまう。
「うあっ、ああ……ああ、お、お願いぃ……や、やめ……」
『まだ口の利き方が分かっていないようだな……』
「かはぁ……っ!!!!」
 いきなり差し込まれる指が三本になり、ぐりぐりと法子の肛門を割った。法子はいきなりの激しさに悶絶する。
『お前の所有者である私に向かって、その口の利き方は何だ?』
「あぐぅ……っ、はぁっ、はぁぁぁっ!!!」
 とても返事ができる状況ではなかった。
 圧迫感、凄まじい刺激、裂けるんじゃないかという恐怖──それらが頭の中で渦巻いて、ケモノのような喘ぎ声を漏らす事しかできないのだ。
『ふん……返事もできないのか。言えないならこのままどんどん指の数を増やしてやるぞ』
「あっあ……っ、ご……ごめ、ごめんなさいぃ、ごめんなさいぃぃ、ご主人様ぁぁ……」
 汗と涙、そして涎でぐちゃぐちゃになった顔で、法子は喘ぎながら必死に謝罪の言葉を繰り返した。
『──許さん』
 途端に、三本の指が激しく動き始めた。
「──うああああああっ!!! ああっ、あああっ、あああああああ!!!!!」
 圧倒的な存在感が法子を突き上げる。
 しかもそれぞれの指はナメクジのようにくねくねと動き、舌のようなざらつきで法子の精神を追い込んでいく。
 もう、法子の精神はずたずただった。
 何も考えられない、何も分からない──。
 ただただ、裂かれてしまいそうなほどの侵入に翻弄されるだけだ。
『どうだ? いきなりこれはキツいだろう……』
「かは──はぁ、はぁ、はぁ……」
 何かを言おうにも、喉が詰まってしまって呼吸すらままならない。
(もう……う、もう、だめ……)
 便器にしがみつきながら、法子はしゃがんだポーズのままわなわなと座り込んでいった。
 その下に実体化した彼の頭が周り込み、舌先と指を容赦なく彼女の体内へと送り込む。
 指先は彼女のアヌスへと、そして舌先は彼女の膣内へと──ずぶずぶと音を立てて。
「──かはぁぁっ!!!」
 かくん、と法子の力が抜けた。まるで腰が抜けたかのように、全体重を男の頭へと掛けていく。
 ずぶ、ずぶずぶ、ずぶ――
「ああぁ、ああああああああああああああああ」
『おっと。もうそろそろ限界のようだな──』
 突然ふわりと、法子の腰が浮き上がった。最初の時と同じ、尻を後ろに突き出す姿勢になる。
 既に忘我の境地に達しているのか、陰裂からは愛液がとろとろと流れ出し、陰核はすっかり勃起していた。
「あぁ、ああぁぁ、す……すごい、すごぃぃ……」
 がく、がくがくと身体全体を震わせながら、法子は悩ましく腰を泳がせる。
 両脚はわなわなと震え、ほとんどその役目を果たしていなかった。ただ腰を持ち上げられている状態だ。
(だめ、だめ、だめ、だめ──)
 恍惚と放心が入り混じった表情で、全身を弛緩させていく。両脚も大きく開かれて、白熱灯の光に全てを晒け出していた。
『ほれ、ほれ、ほれ、ほれ──』
 舌先が出し入れされる度に、ごぷっ、ごぷっと愛液が溢れ出て、足元のマットをぐちゃぐちゃに染めていく。
(もう、もうダメ、もうダメ、もうダメぇ……)
「あああぁ、あああぁ、あああああああ!!!!」
 目をカッと見開き、ぐい、ぐいと背筋を反らせていく法子に、男の声も平静を失っていった。
『もういいだろう……くくく……さぁ、くれてやる……存分に、味わえっ!!』
 ひくひくと蠢く女唇から舌先が離れ、代わりにぬぅっと大きな何かが迫る。
「──!!!」
 恍惚と焦燥の只中にいる法子は、ぴたりとそれが膣口に当てがわれるまで、それに気付かなかった。
『うおおおおおっ!!!』 
 ずんっ!!
 いきなり男の性器が、法子の中に突き入れられる。
 ひいっ、と法子の喉が鳴った。
 ずぷ、ずぷずぷずぷずぷ……
「う……うああ、あああああぁ……お、おおきぃ……おおきす…ぎ……」
『くっ……相変わらず、熱いな。溶かされるようだ……』
 前の陵辱の時の二倍近くの太さで、男根は法子の膣壁を抉じ開けていく──それもヤスリのような、絶妙なざらつきを持って。
「ぃやあ・あ・あああぁ・が……ぁ……」
『……どうだ? お前にぴったりの大きさだろう? くっくっく……いいぞ、すごい締め付けだ……』
 後ろの口にも3本の指を咥えさせたまま、男は容赦もなく、法子の中へと突き進む。
 ずぷ、ずぷ……ずぐ、ずぐ、ぐぐぐ……
「あぁ……は……」
 ぎちぎちに裂けてしまいそうな程の「質量」が、法子を蹂躙していた。
『さぁ……動くぞ、法子……』
 やがて彼女の内奥までもを貫き終えると、逸物は更に子宮の中へと突き入ろうとするかのように往復を始める。
 ずんっ、ずっ、ずんっ、ずっ──
 突き入ってくる──二度、三度、四度──
「くぁぁぁっ、はぁぁっ、あああああああ!!!!」
 焦らし、いたぶられ続けていた法子の身体は、その凶悪な刺激に成す術も無かった。
 痛い、苦しい――でも、それら全てが、痺れた頭の中で、快感へと姿を変えていく。
 ずんっ、ずぐっ、ずんっ!! ずんっ!! ずんっ!!──
「だめぇっ、もうダメぇっ、あああっ、あああああっ、イッちゃう、イッちゃうぅーーーー!!!!」
『いいぞっ、許してやるっ、さぁ、イけ!! イけ!! イけぇっ!!!!』
 ずんっ!! ずんっ!! ずんずんずんずんずんずんっ!!!
 子宮の入り口を激しく突き上げられ、法子の背筋はぴいんと張り詰めていく。
 菊門に入っている3本の指も無茶苦茶に動き始めて、彼女を更に追い詰めていた。
「あああああっ、ダメぇっ、ダメぇっ、ダメぇぇぇぇぇっ!!!」
『うお、うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!』
 ずんずんずんずんずんずんっ!!!──ずぐんっ!!!!
 止めとばかりの、最後のその突き入れに──頭の中で、何かが爆ぜた。

「ひっ、ひぃぃっ、ひあ、ああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 昨日のイキ狂いからは打って変わったような焦らし、そして最後の最後に訪れた、とびきりの絶頂。
 法子の精神は再び、遥かな高みに舞い上げられていく──

「うぁ・あ……ぁ……」
 がくん、がくんがくん、がく……
 痙攣を繰り返す法子の子宮へと──
『うおおおおおおおおおああああああああああああああああっ!!!!!!』
 ずびゅっ、ずびゅっ、びゅる、びゅるるる、びゅるっ──ごぷ、ごぷっ、ごぷ、ごぷん……
 男の精が放たれた。
「あ──あぅ、あああぅ、あああああ……」
 子宮の内部を満たし、更に溢れ返るほどの量に、失神しているはずの法子が喘ぐ。
 ごぷ、どぷ、どぷん……ごぽ、ごぷ……
『はぁっ、はぁぁっ、はっはっは、はっはっはっはっはっはっは!!!!!』
 法子の中に満たされた精は、再び法子の魂を、侵食していく……。
「あああ、ああああう、あああう、あああああ……」
 精を逃がさぬように逸物を挿したまま、男は、堕ちていく法子の横顔を、満足げに見つめていた。
『そうだ……そう……私に、全てを委ねろ――全てを、受け入れるのだ……』
「う……あぁ……」
 完全に力を失った法子の腕が、だらりと垂れ下がった。



 亡霊の住む家 18 に続く








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