亡霊の住む家 20

 『法子と雪乃 @』


 その、夜。

 法子は、眠っている夫の隣で犯されていた。

 ぴり、ぴり、ぴり──。
「あぁ……」

 薄暗い、蛍光灯の照らす寝室の中……。

 熟睡する夫の横で立ち尽くす妻が、ネグリジェを段々と破かれていく。
 それは悲しくも、淫靡で美しい光景だった。

 夫に知られるという恐怖から、法子は必死に声を出すまいとしているが、それでも完全に押し殺せてはいないようだ。
 だが、夕食に盛った睡眠薬の効き目が強いのか、龍司は目を覚ます気配もない。
『夫の前で抱かれるというのも……また、格別な思いだろう? 法子……』
「うぅ……!!」
 涙目の法子の裸体が、次第に暴かれていく。
 たわわな乳房と、その上の清楚な乳首が覗き、上品に上を向いた臍が現れ、そして──。
『……ほう。もう濡れているのか。こうして愛されるのがよほど楽しみなのだな……くくく。淫乱な女だ』
 既にしとどに濡れている秘部が、男の視線に晒された。
「あぁ……っ!!」
 法子は堪らず顔を覆い、羞恥の涙を流す。
『くっくっく……上の涙と下の涙、果たしてどちらを信じればいいのやら……』
 すうっ、と、見えない手が法子の乳房を持ち上げる。
「ふぅ……っ」
 それだけで、法子の身体はぴくりと震えた。
 手は乳房を支えるように、解すように──優しく揉み、指先がその乳首を求めて這い回る。
「……、ひ……ぃ!!」
 指先が乳首に触れた瞬間、法子の全身に鳥肌が走った。
『ほれほれ、もうこんなに固くして……』
「言っ、言わないで、お願……くぅ、ん……」
 哀願の言葉が、男の唇に塞がれる。
 男の舌先が巧みに法子の口腔を這い回り、彼女の理性を蕩けさせていく。
「ふぁ、あ……」
『――どれ、こちらも舐めてやるか』
 ざらっ。
「っ!! ひぃぃ……っ!!」
 やっと唇を開放され、脱力しかけた法子の胸に、男の舌先が襲い掛かっていた。
 ざらりとした感触に晒され、乳首はむくむくと、その頭をもたげていく。
「あっ、あぁ……」
 吐息のような喘ぎ声と共に、法子はやるせない気持ちで自らの敏感な乳房を見つめた。

 ざらり、ざらり、ざらり……

 気の遠くなりそうな快感の中、乳首はあっけなく屹立して、ピンと天を向いていく。
『くっくっく……つくづく、可愛い奴よ……そんなに気持ちが良いのか? ほれ』
「あはぁ……っ、くぅぅ……」
 言葉と共に、ピンッと鋭く乳首を跳ねられ、法子は仰け反って獣のような呻き声を上げた。
 同時に熱く潤った泉から、つぅっと一筋、愛液が流れ落ちる。
(あぁ、どうして……)

 かつて愛した夫の前なのに、こんなに……。
 どうしてこんなに感じてしまうのか、法子には全く訳が分からなかった。

『では、いくぞ――しっかりと受け止めろ』
「え――――んっ、んんんっ!!!」
 声とともにいきなり後頭部を掴まれ、顔を枕に押し付けられた。ぐい、と強引に股を開かれる。
 ずん……っ……!! 
「んんんーーーっ!!」
 堪らず上がるくぐもった叫びも無視し、男の性器が強引に法子を貫いていく。
 ずっ、ずっ、ずっ……
「くふぅ……うぅぅ……!!」
 カッと目を見開き、ぶるぶると全身を震わせながらも、法子の膣は迎え入れるように男根を飲み込んでいた。
『どうだ? 法子よ……かつて愛した男の前で愛されるのは……?』
「ふぅ……ぅ……」
 ぼろぼろぼろ、と法子の瞳から涙が零れた。
 男はその涙をあざ笑うように、激しく動き始める。
 ずっ、ずっ──ずん、ずん、ずん──
「んーっ、んんんーーーっ!!!」
 堪らずに、法子の体が跳ね上がった。
『そうかそうか、そんなに嬉しいか……くっくっく』
 男の言葉とは裏腹に、その手は法子の身体を力ずくで押さえ込み、暴れる腰を無理やり引き寄せる。
 嗜虐的なその声の響きが、男の愉悦を物語っていた。
「ん、んんんん……んふ……ぅ…………」

 快感。

 間違いなく、今法子を追い詰めているのは、羞恥でも恥辱でもない――圧倒的なまでの快感だった。
 貫かれ、貪られて、征服される女の悦び。
 次第に法子の潤んだ瞳から光が、消え失せていく。
 いきなりの侵入にわなないていた膣も、とめどなく溢れ始めた愛液によって急速にその滑らかさを取り戻していた。 
 ずん、ずん、ずん──ずぐ、ずぐ、ずぐずぐずぐ――
「く、ううううううーーーっ!!!」
 突き上げられる度に、法子の背中が反り上がっていく。
 男は彼女の腰を持ち上げ、より鋭く、より深く――そのストロークを強めていった。
『どうだ――いいか。たまらないだろう、くくく。私は既にお前の全てを、知り尽くしたからな』
「んうぅ、んうぅぅ、んうぅ……ん、ふ……ふ、ふ、ふぅぅ……」
 信じられないほどの太さと、硬さと、凶悪な形状を持った男根が、法子を、蹂躙していた。
 かく、かくん、と、手足から力が抜けていく。
 快楽だけが、全てを、飲み込んでいく。
『性感帯の全てを、クリトリスを嬲る強さと間隔を、そして、膣の中の襞の一枚に至るまで――全てを、な』
 ずん――すんっっ!!
「んううううっ、う、う、う……うううぅくぅぅーーーーーーーーーーーーっ!!」
 一際強いストロークに、軽い絶頂が法子を襲った――快感で、視界までもが歪んでいく。
 滂沱のように流れる涙は、悲しみからか、それとも快楽のそれか――もう法子自身にも分からなかった。
 抑えようにも抑えられない喘ぎ声が、食いしばった歯の間から漏れていく。
 ずぐずぐ、ずぐずぐずぐずぐ――
『もう、お前の身体はこの快感を忘れられん。その乳が、膣が、子宮が――私という存在を、求め、咽び啼くようになる』
「んうぅぅぅ、んううううぅぅ……うぅ…………ぅ……」

 深く、浅く、深く、浅く――
 次の動きも予想できないうちに次の刺激が襲ってくる――膣壁を、ごりごりと音がするように、男のペニスに、抉られていく――。
『ふふ、ふ……膣内が、どんどん熱くなっていくぞ、絡み付いてきて、熔かされそうだ――やはり、お前のコレはすばらしい名器だな』
 わずかに上擦った主人の声に、言いようもない嬉しさがこみ上げる。

 一面銀色に染まっていく脳裏の中で、ちかちかぁっと、黒い火花が散る。
『それ、フィニッシュだ、イッてしまえ――そら!!!』
 ――ず、ぐんっっっ!!!

「――――――――っ!!!!! んぅ………………ぅ…………ぅ……………………うぅぅ………………うぅ…………」

 がくんがくんがくん、と上体を痙攣させ、法子は再びあっけなく絶頂を迎えた。
『ははは、はーーっはっはっはっは!!!』
 ご――ごぷん、ごぷ――ごぽ、ごぷ……
 待ち兼ねたように男の精が迸り、法子の子宮を満たしていく。
 無防備に曝け出された精神に、何かが――染み込んで来る。

 ――恍惚と絶望、銀色の世界に漆黒の何かが混ざり、ぐちゃぐちゃに掻き回されていく。

「…………」
 息も絶え絶えに、法子は絶望の余韻に酔いしれていた。
『では、今夜のメインイベントと行くとしよう――』
「――――っ!?」
 嘲笑を含んだ声とともに、ぐい、と両手で尻の肉を掴まれ、法子の菊門が男の視線に晒される。
『今日はココの仕上げだ……お前の後ろの処女を頂くぞ』
「んうぅぅぅっ!? ん、んーーーーっ!!」
 驚愕に満ちた叫びが、枕から漏れる。
 法子は慌てて振り向こうとしたが――遅かった。
 男の逸物は、既に法子のアヌスへとその先端を密着させ――

 みし、みしみしみしみし……
「んーーーーーーっ!!! んーーーーーーーっ!!! ん、んんんんーーーーーーーーっ!!!!!!」 

 ――こじ開けるように法子の体内へと穿たれて行った。
 彼女の目は眦の限界まで見開かれ、その激痛を物語っている。
「ん、ん、んぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!! んんぅ、んぅ……」
 男根は一気に、その根元までを法子のアヌスへと沈めていた。事前に幾度とない調教を受けていたとはいえ、その凶悪なまでの太さに法子は全身で悲鳴を上げる。
『ぐ……これは、凄い……物凄い締め付けだぞ……法子……』
 法子はまるで幼児のように泣きじゃくり、嫌々をするように激しく首を振りたくっていた。
 全身が限界を超えてギリギリと反り上がり、絶頂のそれとは違う冷や汗が噴き出していく。
『かつて愛した男の目の前で、もう一つの処女を散らしたのだ……最高だろう?』
「んううぅぅ、んぅぅ……うぅぅ、う…………」
 ずん――ず、ぐぐ――ずんっ!!
 男の怒張が突き出され、そしてゆっくりと引き、また突き入れられる――その度に、法子の意識は千切られたように遠くなっていく。
「ん、うぅぅ……うぅ……」
 あまりにも異質な刺激、そして激しい痛み……まだ、その刺激を快感と感じる事はできなかった。
(……、…………)
 法子は糸の切れた人形のように、かくん、と全身の力を抜く。
 白目を剥いたまま、気絶していた。
『ふむ……まだ少し早すぎた、か……まあいい、最後まではやらせてもらうとしよう――それ、、それそれそれっ!!!』
 かくんかくんかくん、と、完全に意識を手放した法子の内奥に、男は再び精を迸らせた。



「――あ、起きるみたいです、ご主人さま」
 そんな声で、法子は目を覚ました。
 茫洋と飛んでいた記憶が徐々に集まり、現実感が戻ってくる。
(わた、し――?)
 次第次第に記憶が蘇り、自分が菊門を貫かれ、痛みの余りに気絶した事を思い出した。
 だが、今の法子を混乱させているのは、そんな記憶ではなかった。
 目の前の光景――愛娘の雪乃が、一糸纏わぬ姿で覗き込んでいたのだ。
(え? え?)
 俄かには状況が飲み込めず、法子はまだ自分が夢の中にいるかのような錯覚を覚えた。
 だが……。
「やっと、やっと起きたのね、お母さん――」
 彼女には似合わない勝気な、見下すような視線でこちらを見つめる光景は、紛れもない現実のものだ。
(何が、一体どうして――)
 起き上がろうとして、気付く――身体が動かない。いつかのように男の声に縛られ、ベッドに大の字になったまま動けないのだ。
「雪乃――雪乃、逃げなさい、逃げて!!」
 寝室に、法子の叫びが迸る。
 混乱の極みの中、全身を焦がすような危機感が法子の中で暴れていた。
 何が起きているのか分からない。だが、娘がこの場所にいてはいけない――それだけは間違いなかった。
「早く――早く逃げなさい、雪乃っ!!」

『――その必要はない』

 ヒステリックに叫ぶ法子に冷水を浴びせるように、男の声が法子を打つ。
「あ、あ、あ――」
 法子はぱくぱくと口を動かす。だが、漏れる声は言葉にならなかった。
 目の前の光景が、次第に飲み込めてくる。
 大きく広げられた自分の脚の間に、雪乃は膝立っている。全身を恥ずかしげもなく曝け出し、大きくその股を開き――。
 そして、青白い影が、その股の間に蟠っている。
 法子の頭の下には枕が重ねられているようで、首を曲げた形でその光景を目の当たりにしていた。
(雪乃――まさか、まさか、雪乃――)
 半狂乱の法子に揶揄するように、笑いを含んだ男の声が降りかかる。
『お前が目を覚ましたらこいつをイかせてやり、犯してやる約束でな――お前がなかなか目を覚まさないので、随分と焦れていたぞ』
「や、約束が、約束が違うじゃありませんかっ!! 私が、私があなたの物になれば、子供たちには手を出さないって――」
 一時、母としての自覚を取り戻したか、法子の声に張りが戻っていた。
 だがそんな法子の怒りにも、男は余裕の嘲笑を浮かべたままだ。
『ああ、約束は守ったぞ、確かにな……お前が私の所有物となってから今まで、娘どもに手は出してはおらん――だが、な』
「あぁっ、ああああぅっ!!」
 言葉と共に青白い指が膣に差し込まれ、雪乃は甲高い声を上げた。その声に微塵の恐怖も嫌悪も感じられないその嬌声に、法子は愕然とする。
『娘が自分から求めてきたのならば、答えなければなるまい――そう、自分から私を求めてきたときには、な……くっくっく』
「な、な、な……」
 咄嗟に言葉が出てこない。何を言うつもりなのかすら、自分でも分からなかった。
 絶望に、目の前が真っ暗になっていく。
『――そう、お前が堕ちるそのまえに、雪乃はすでに私の所有物となっていた、という訳だ――これなら、約束を破ったことにはなるまい? く、くっくっく、はーーっはっはっはっは!!』
 男の哄笑が、更に法子を絶望の底へと打ちのめす。
(ああ……そんな……雪乃、雪乃……どうして……)
 縋るように愛娘を見つめた法子に答えたのは――先程も垣間見た、挑むような、哂うような雪乃の視線だった。

「ご主人さまの仰る通りよ、私はご主人さまの所有物になったの――お生憎様」

「雪乃……?」
 信じられない、という法子の表情を、雪乃は勝ち誇ったような冷笑を深めて見下ろした。
「ふん、何が『私があなたの物になれば』よ、要するにご主人様を独り占めしたかっただけでしょ、この裏切り者!!」
 冷笑が、少しずつ憎しみの表情へと変わっていく。
「――――!?」
「ビデオ、見たわよ――お父さんという人がいるのに、裏切って、しかもあんなに嬉しそうに腰を振って」
「雪乃、わたし、私は……」
 愛娘に睨まれ、その視線に全身が竦んだ。
「お父さんを裏切って、それで自分を誤魔化して、こんどはご主人様も独り占め? なんてあさましいのよ!!」
「ひ、ぃ……」
 体温が一気に下がったような錯覚と共に、どっと冷や汗が噴き出していく。
 そんな打ちのめされた法子の様子に、雪乃は満足したかのように嘲笑を浮かべた。
「――まあ、それでもあれだけご主人様に愛して頂ければ満足したでしょ。今度は私の番なんだから、黙って見てて」
『そういう事だ……あまりに焦らし過ぎるのも可哀想と言うものだろう? 少しは娘のことも気遣ってやれ……くっくっく……』
 男の言葉と共に、その青白い影が動き始めた。
 じゅるり――
 無防備に曝け出された秘部に、むしゃぶりつき、啜る……そんな隠微な光景が法子の眼に焼き付いていく。
「ああ、ぁ……気持ち、いいです、ご主人さま……」
 法子を見下ろす嘲笑の中に、隠し切れない悦びが混じり始め――次第次第に、うっとりとした恍惚の表情へと変わっていく……。
 それはさながら、固い蕾が次第に花開き、可憐な花びらを咲かせていくようにも、見えた。
(雪乃……あなた、もう……)
 母親の見ている目の前で、雪乃は隠そうともせずに、その快楽を訴える。
 完全に淫道に堕ちた「女」の表情が、そこにはあった。
「ふぁ、あ、あ……ご、ご主人さま、もう、もう……だめ……」
『ふふふ……もう限界か? まあ、法子が失神している間、ずっと我慢させていたからな、無理もない……どれ、そろそろイカせてやろう』
「お願い……お願いしますぅ、ああ、ああああっ、すご……い、凄い、です……あああ、あああああ!!」
 にちゃり、にちゃり、にちゃり――
 十本の指が、舌が、滅茶苦茶に雪乃の花びらを、膣を蹂躙していた。
 雪乃の身体はそれに応えるように、次第しだいに反り上がり、かくん、かくんと腰を揺らし始める。
「ああぁ、ああぁぁぁ……やっと、やっとイけるぅ……さ、最高、最高だよぉ……」
 彼女を産んでから十数年、今まで一度たりとも見たことのない、蕩けきった微笑。
 その表情を――そして、男の絶妙な愛撫の動きを、いつしか法子は食い入るように見つめていた。
(あぁ、あ……)
 法子の肉体が、貪欲にその愛撫を、欲していた。
 目の前の光景を自分に投影し、肉体がその快楽を求めて、疼いている。
 胸を焦がすようなもどかしさが、法子の身体を急き立てる。
「ああ、ああああ、く……る、来る、来る、来るくるくるぅぅぅっ、ああああっ、ああああああああああああっ!!」
 一瞬、宙を彷徨っていた雪乃の視線が法子を捉えた。蕩けそうな甘い微笑を浮かべたまま、抑えきれない優越感をその瞳に浮かべて――。
 かぁっ、と、法子の中で何かが燃え上がる。
『おっと、こっちを忘れていたな。こっちも弄ってやろう』
「あはあああぁぁぁぁぁぁぁっ、ご主人さまぁぁぁっ、そ……こ、そこはぁ…………あはぁぁっ、だめぇっ、だめぇぇぇっ」
 男の指は後ろの穴にまで伸び、つぷつぷと抵抗無くのめりこんでいく。
 ――雪乃の身体が、若鮎のように跳ねた。

「ひあああああああああああああっ、ああああああああぁぁああああああああああああああああぁあああああああああああああああぁぁぁあああああ!!!!!!!」

 異質な刺激が最後のスイッチになったのか、雪乃はその瞬間に全身を引き攣らせて絶頂を迎えた。
 まるで感電したかのように、苦悶とも見て取れる表情で、獣のような絶叫を上げる愛娘。
 だが、その瞳は勝ち誇ったような表情で法子を捉えたままだった。
 びくん、びくん、びくん――
「あ、あ、あ……あぅ、ん、んう……んん……」
 絶頂に酔いしれたまま、雪乃は男に唇を奪われる。
 全身をくねらせながら、濃密に舌を絡め合い、うっとりとその瞳を閉じる。
(…………っ!!)
 法子は、はっきりと今、雪乃に嫉妬している自分に気づいていた。

 かつての自分が、そこにいた。

 穢れを知らないその白雪のような身体。
 若さという特権だけが持ちうる、その輝かしいまでの純粋さ。
(私、だって――)
 私だって、そんな穢れを知らない少女の頃に、御主人様に出会えていたら……。
 そんなどす黒い感情が、法子の中に芽生え始める。

 ただ何も知らずに、その純潔と純粋の全てを御主人様に捧げられていたら、どんなに幸せだっただろう。
 目の前の娘は、そんな幸運を当たり前のように持っているのだ。
 法子は――そんな雪乃を、

 嫉ましいと、思ってしまった。



 亡霊の住む家 21 に続く









戻る