──小島有希(4)──       作:SYARA


 有希は、暗闇の中で目を覚ました。
 ひんやりした空気と、低く唸るようなエアコンの音だけが聞こえる。
 僅かに、カビのような饐(す)えた臭いがした。
(ここ……どこ……?)
 辺りを見ようとしたが、首が動かない。
(……!?)
 首だけではなかった。手も、足も、腰までも、全身が何かに締め付けられて動かなかった。
(私……縛られてるの!?)
 意識すると、きりきりと身体に食い込む縄の痛みが感じられてくる。
 首は何か布のようなもので固定されていて、ビニール生地のマットの上に寝かされているようだ。
 そして、目を塞ぐ布のようなもの──
(目隠し……!?)
 全身を縛られ、目隠しされている。
(な、何なの、これ!?)
 有希は混乱した頭で必死に考えた。しかし、明確な答えは出でこない。
 昨日の夜は、いつも通りに自分の部屋で眠りについたはずだ。
 それが、どうしてこんな事に……
 ──サワ。
「ひゃぁっ!?」
 いきなり首筋にくすぐったい何かが通り過ぎ、有希は思わず叫んでしまった。
「だっ、誰!? 誰なの!?」
 答えは無い。ただ答えるように、今度は耳朶をやわらかい何かが触れる。
「ひぃんっ!! やっ、やめてよっ!!」
 変な声を出してしまう自分を誤魔化すように、有希は強い口調で見えない誰かに向かって言った。
 だが、それでも答えは無い。そして、そのやわらかい『何か』は有希の身体を這いまわり始めた。
「やっ……やぁ、やめてぇっ!! やめてよぉっ!!」
 ぞくぞく、と這い上がる悪寒に耐えながら、有希は叫んだ。
(これ……筆……だ……)
 這い回るものの正体に気づき、有希はかぁぁっと顔を紅潮させた。激しくもがいて拘束から逃れようとするが、しっかりと身体に食い込んでいる縄はびくともしない。
「やっ……やめぇ、ホントに止めないと、許さないからっ!!」
 有希は顔を真っ赤にして叫ぶ。そうやって騒がないと、這い回る感触の渦に飲み込まれそうだった。
 筆は何度も何度も、有希の身体中を這い回る。有希は視界を封じられ、否応も無くその動き意識を集中させてしまっていた。
 そして次は何をされるのか、何処に──という不安が、より一層刺激を増幅してしまうのだ。
「やだぁっ!! や、やめてったらぁっ!!」
 ……そして、有希の反応が大きい部所に、次第にそのターゲットを絞っていった。
(うぅ……やだぁ……感じ……ちゃう、よぉ……)
 肌は次第に赤みを帯び、ほんのりとピンク色に染まりだしている。──有希は、湧き上がってくる自分の身体の疼きに、戸惑っていた。
 さわ。
 今度は腰の周りを撫で回す筆先。
(……ぁ……!!!!)
 ここで、有希は恐ろしい事に気が付いた。……気が付いてしまった。
 筆が、直接、腰を……おしりを……撫でている。
 ──自分は、服を着ていないのだ!!
 大股を開かされた、こんな体勢で……。
「い……いっ、いやぁぁぁああああーーーーーーっ!!!!」
 有希はパニックを起こして暴れ始めた。縄がぎりぎりと音をたて、身体に食い込んで赤い跡をつけていく。
「やめてっ、やめてぇ、いやぁぁぁーーーーーーっ!!!!!」
 その表情は、もう男勝りのサッカー少女のそれではない。年相応の、ただ泣きじゃくる女の子の顔だった。
 だが暴れる有紀にはお構いなしに、筆は有希の弱いポイントを責め続ける。
「……やだぁ、やだやだやだぁっ!!!」
 ぴく、ぴくと有希の身体が震えはじめた。
 目隠しから、すうっ、と一筋の涙が流れ落ちていく。
(ど、どうしよう……どうしよう……気持ちいい……おかしく、なっちゃう……)
 筆先が汗で濡れてきた。濡れた筆先は、またこれまでとは違った刺激を有希に送り込む。
「ぃ……やぁ……」
 大きく開かれた太腿をぶるっと震わせて、有希は脂汗を流し始めていた。頭が段々、ぼーっと霞が掛かったようになっていく。
(や……やだ、やだ……こんなの……感じちゃ、ダメぇ……ダメぇぇぇ……)
 有希はパニックになっている頭の中で、必死に込み上がる快感と戦っていた。
 裸を見られているのに、これ以上の痴態は死んでも見せられない……。
 その思いだけが、今の有希を支えているのだ。
 だが……。その有希の理性も、次第に限界に追い詰められていた。
「やめてよぉ……やめてぇ……」
 筆の動きは、巧みだった。確実に有希の弱点を突き、そこから筆を往復させて無理矢理性感帯をこじ広げていく。
 腿の外側、脇腹、脇の下……有希の弱点は、身体の側面だった。筆は執拗に左右のそこを上下し、巧みに筆先を乳房に、乳首にと伸ばして有希の性感を共鳴させるのだ。
 男勝りとは言え、性体験など数度の自慰しかない少女に過ぎない有希には、ひとたまりもなかった。
 弄られた乳首はぷくり、と膨らみ、その可愛い全身を露(あらわ)し始める。
「く、ぅ……」
 その乳首を筆先で丁寧に撫で回され、ビリビリと電気のような快感が有希の身体を駆け抜けた。
 有希は知らず知らずに、男の思うが侭に、舞い上げられてしまう……。
「は……はぁ、はぁ……」
 有希の息は次第に乱れ、大きくなってきていた。筆が性感帯を撫で上げるたびに息を飲み、遅れた呼吸を取り戻そうとしているうちに息が乱れていったのだ。次第に有希の意識は朦朧としてくる。
 そんな自分の身体に、更に絶望的な変化が起き始めているのに、有希はまだ気付いてはいなかった……。



(あ……有希のアソコが……)
 しばらくして僕は、大きく広げられた両脚の間で息づくピンク色の秘裂に、変化が起きているのに気が付いた。
 僅かに覗いている秘肉の表面に、一粒の雫が湧き出しているのを見つけたのだ。
(そうか……濡れ始めて……)
 僕はニヤリと笑い、更に筆先での性感帯への愛撫を強める。
 実は有希には、寝ている間に興奮剤を打ってあったのだが、効果はてきめんの様だった。
「ふぁ……ぁ……い、いやぁぁ……」
 ぴくんぴくん、と震える有希。その顔にも、何かに耐えるような恥ずかしげな表情が混じり始めている。
(必死に快感に耐えている、か……。本当に可愛いなぁ……滅茶苦茶に、壊したくなるくらいに……)
 見たところ、有希の一番の弱点は『耳』だ。
 僕は、その有希の耳を集中的に攻めてやる事にした。
「きゃ、ぁ……やめて、そこはやめてぇ!!」
 案の定、有希は顔を真っ赤にして叫びだした。
(くっくっく……敏感な娘だ……。これからが楽しみだなぁ……)
 無視して何度も何度も筆で責めてやると、声も出せなくなったのか有希は全身の筋肉を緊張させて震え始める。
 そして……
(濡れてきた、濡れてきた)
 有希のピンク色の肉の谷間から、とろりと透明な蜜が流れ出したのだ。
「濡れてきたみたいだね、有希」
「だ、誰っ!?」
 いきなり声を掛けられ、有希はびくっと震えながら叫ぶ。
 僕は叫びを無視し、いきなり有希の目隠しをとる。
「え……!!」
 有希の目に映ったのは、薄暗い地下室で全裸で大股を開き、濡れた秘部をさらけ出している自分の姿。
「…………!!!」
 ──そして、真正面からそれを捉えているビデオカメラだった。
「……い、いやぁ、いやぁあああああああーーーーーーーーっ!!!!!」
 だが、有希の絶叫が地上に届く事はなかった。

 分厚い土の壁は、彼女を地獄へと閉じ込め続ける──


 もすこしつづく