──小島有希(9)── 作:SYARA
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
薄暗い、地下室の中には、
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
ただ、少女の荒い息遣いだけが、響いていた。
「う、うぅ……」
有希は、両手と両脚だけをベッドに縛られた状態で、しきりに身をくねらせている。
ズイキエキスの塗り薬の効果──それは、猛烈なまでの痛痒感だった。
粘液に接触したズイキエキスの成分は、微小な針状結晶を作って皮膚に小さな傷をつける。それが強い痒みとなって、肌の持ち主を襲うのだ。それが敏感な性器であれば、その効果は更に桁違いにハネ上がる。
「うぅぅ、くぅ……くううぅ……」
──これが、有名な「ズイキ攻め」だ。
チューブ1本分の薬を、たっぷりと塗りこまれた有希に、耐える術はない。
「うふう、ううぅぅ、ううぅぅぅ……」
込み上がる呻きを抑える事もできずに、有希は目に涙をためて猛烈な痒みに耐えていた。
悩ましげに太腿をすり合わせ、少しでも秘部に刺激を送ろうとする──しかし、それは逆効果だった。
僅かな刺激の満足感の後に訪れるのは、擦り合わされて更に深く染み込んだズイキエキスの痒み──。
「うぁ、あああ、あああああ!!!」
悪夢のような悪循環に身をよじらせる有希を、僕はただ黙って見下ろしていた。
ズイキ攻めに、卓越したテクニックは必要ない。ただこうして、黙って見ていればいいのだ。
唯一気をつける事と言えば、なるべく感情剥き出しの下卑た笑いを浮かべる事だけだった。
「くっくっく……」
「うぅ……!!」
そうして、女になるべく屈辱感を与えておく事がポイントだ。どうせ女が堕ちるのは分かっている。それまでになるべく女の羞恥心とプライドを煽り、充分に高めたところで打ち砕く。これがこの攻めの醍醐味なのだ。
「なんで……こんな……」
僕はふぅっ、と、有希の股間に息を吹きかけた。
「ああ・あ、あ……」
たちまち有希は、切迫し表情で身をくねらせる。もうこの程度の刺激にすら、有希は激しい反応を示すようになっていた。
「一体……いったい、何をしたのよぉっ!!!」
有希は泣き叫ぶように言う。涙混じりに睨む表情が、たまらなく美しい。
「いやなに……この薬を塗っただけだよ……有希の、アソコにね」
「それは……!!」
有希もこの薬は知っていたようだ。まあ不思議ではない。どこの薬屋でも簡単に手に入る、筋肉痛用の軟膏だったからだ。部活の際に使った事でもあるのだろう。
「これはね、普通に使う分には良いんだけど……粘膜につけると凄く、痒くなるんだ……」
「くぅ……」
僕の意図を知り、有希は悔しそうに僕を見た。
涙目で頬を紅潮させ、唇をわななかせるその表情は、僕の嗜虐心をぞくぞくと震わせる。
「うっ……う……」
だが、有希はすぐに、押し寄せる痒みにぎゅっと目を閉じてしまった。きつく両脚を閉じ、もじもじとすり合わせる。
ここまで効けば、もう心配はない。後はじっくりと、悶える少女の姿を鑑賞していれば良い。
「ふぅぅ……ぅぅ……」
数分もしないうちに、有希の反応は顕著になってきた。瞳は潤んでその輝きを霞ませ、肌はピンク色に上気してじっとりと汗を滲ませ、そしてその秘部は赤く腫れ上がってひくひくと蠢いていた。
刺激を欲するがために、女は自分で秘部を擦り合わせ、より深く薬を染み込ませていく。その様子を見て悦にいるのも、この攻めの楽しみの1つだ。下卑た笑いを浮かべながら、僕は堕ちていく有希を眺めていた。
「あ……あぁ……」
有希はまるで絶頂する時のように、全身を突っ張らせて震えている。
「……掻いて欲しいのかい?」
「うぅっ……!!」
有希は涙と汗でぐしゃぐしゃになった顔で僕を見た。恥辱と、僅かに哀願が混じり合った表情。
僕は爽快な気分で有希を見返した。有希の陥落は時間の問題なのだ。それまで、たっぷりと勝者の余裕を味わわせて貰うとしよう。
「掻いて欲しければいつでも言っていいんだよ。そう、でも僕は──」
そう言いながら、僕はギンギンに勃起している性器を有希に見せた。
「ひっ……」
有希が恐怖の表情で見る中、僕は高らかに宣言した。
「──これでしか、有希のナカを掻いてあげられないけどね……」
「……いやぁっ……」
有希は顔を反らせて、僕の性器を視界から追い出そうとする。
「ふぅん、嫌なのか。じゃあ僕にもどうする事もできないなぁ。このまま頑張ってみたら?」
「ひっ、卑怯者っ、卑怯者ぉぉっ!!!」
「くっくっく……何を言ってもムダだよ、今更、ね」
正々堂々とした奴なら、そもそもこんな事をする筈が無い。
「うぅ、うぅぅぅ……」
全身で息をしながら、有希は身を焦がすような強烈な疼きに耐えているようだった。噛み締めた唇からは血が滲み、強く握り締めた指先は力を入れすぎて真っ白になっている。
「それじゃぁ、用がないなら僕はこれで。頑張ってね」
「え……!?」
突然の僕の態度の変化に、有希は思わず縋るような声を出した。まさか僕が出て行くとは、思いもしなかったのだろう。
「まぁ、次に来るまでに考えておくんだね。疼きが消えるまで我慢してみるか、それとも僕のコレで掻いてもらうのか……」
「あ、あ……!!」
有希は今、予想外の展開に混乱しているはずだ。
僕が目の前にいる間は、有希は悔しさをバネに頑張れる。しかし、誰もいない地下室でこの疼きに耐えるのはその何倍も難しい。
有希は認めないだろうが、屈服しさえすればこの疼きから開放されるという無意識の安心感が、有希の中には必ずある。
だが無人の場合は、たとえ有希が屈服して泣き叫んでも、誰もその地獄から救い出してくれる者はいないのだ。自分を陵辱する相手が安心の源になるとは皮肉な話だが、薬を使っての放置プレイというものは、これが基本だった。
いつまで続くのかさえ分からない煉獄の苦しみ──ゴールの見えない苦痛は、簡単に人の体力と気力を奪っていく。
「もっとも、気が向かなくなって来ないかもしれないけどね──じゃあね」
「あっ、あ……!!」
有希の僅かな反応を内心では喜びながら、僕は知らぬ振りをして地下室を後にした。
バタン……。
(さぁて、有希はどんな悶え方をするのかな……)
僕はそのまま、1階にあるモニター室に移動して有希の反応を見る。
「そんな……!!」
薄暗い地下室に、やけに大きく、有希の声が響いていた。
◇
15分が経った。
モニターの中の有希は、しきりに身をくねらせて疼きを逃がそうとしていた。
「は……あ、はぁ、はぁ……うう、う……く……ぅ……」
全身にじっとりと汗をかき、唇をわなわなと震わせ、さながら薬物の禁断症状のようだ。
(まぁ、似たような物かも知れないな……)
僕はモニター越しに、有希が追い込まれていくのを眺めていた。
地下室に取り残され、強烈な疼きに晒され、いつ僕が戻るのかも分からないこの状況で、有希はどのくらい保つのか──僕は、それを15分と踏んでいた。
(そろそろ顔を出してやるか……)
モニター室を後にし、地下室への階段を下りる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
足音が聞こえたのか、地下室からは狂おしい叫び声が響いてきた。
◇
地下室のドアを開けた瞬間、有希の叫び声が耳を打った。
「あああああっ、掻いて、掻いて、掻いてぇ!!!!」
どうやら放置プレイの効果は上々だったようだ。
僕はゆっくりと、ことさらにゆっくりと有希へと近づき、その顔を覗き込んだ。
「ああ、あ、ああ……お願いです、掻いて……ここ、掻いてぇ……」
もう彼女はプライドをかなぐり捨ててしまったようだ。有希が自分から敬語を使って哀願するなど、先程までは考えられなかった事だ。
「お願いです、お願い……ああ、ああぁ……掻いてぇぇ……」
有希の性器はもう、爛れたように真っ赤になってしまっていた。全身をわなわなと震わせ、玉のような汗を纏わせ、半開きの口からは止めどなく涎が流れている。手足首のゴムバンドは暴れる有希の身体に食い込み、赤黒い痣を象っていた。
半泣きの子供のような顔の有希に、僕はニヤニヤと笑いながら答える。
「そうかそうか……では、僕に処女を捧げるんだね?」
「……!!」
その言葉に、有希の瞳に力が戻った。
きっと歯を食いしばり、精一杯の気迫でこちらを睨む。
「……凄いね。まだそんな気力が残ってるなんて……」
僕は思わず、感嘆の声を出していた。押し殺したような有希の低い声が、それに答える。
「誰が……誰が、こんな卑怯な事に屈するもんか……くぅぅっ!!」
だが、強がりは僅かな時間しか保たなかった。湧き上がる疼きを抑える事は、さすがの有希の意思力でもどうしようもないのだ。これは当然の生理現象──と言うよりは、化学反応なのだから。
「ふぅん……じゃあ、これはどうかな?」
僕はそんな有希の苦悶を眺めながら、隠し持っていた筆でいきなり有希のクレヴァスを撫で上げた。
「ひぃぃぃ……っ!!!!」
途端に有希の腹筋は引き攣り、目は見開かれて焦点を失っていく。腫れ上がって敏感になり過ぎている部分に、くすぐるような筆先の感触が襲ったのだ。有希の背中はさながら電気ショックを受けたように跳ね上がっていた。
「そぉれ、それ……これでも、まだそんな事を言えるかな……?」
「ひぃぃぃっ、ひい、ひ……きぃぃぃぃっ!!!!!」
有希の脚は今、足首だけが固定されている状態だ。太腿を閉じようと思えば閉じる事ができる。しかし狂おしく刺激を求める有希の本能は、筆の責めを受けてもなお、秘部を隠そうとはしなかった。
逆にその両脚はぎりぎりと開いていき、その熱く潤う唇を筆に晒して、貪欲に刺激を求めていく。
「ああ、あああ、ああああ、ああ、ああああ……やだぁ、やだぁぁぁ……」
筆先が動き回る度に、有希は太腿をわななかせて切なさを訴えた。その膝と足首が次第次第に伸び、つま先がピンと天井を向いていく。
「あああ、あああ、あ!!! あーーーーーっ!!!! ……あぁぁぁ、あぁ……」
ぷしゃあああああ……
がく、がくがくと全身を震わせ、有希はあまりの刺激の強さに失禁してしまった。無念そうな、切なそうな声が長く尾を引いて、その失禁ショーを彩らせる。
「おやおや……おもらしするほど欲しいのかい? はしたないなぁ……」
透明色のアーチの軌道を筆先で玩びながら、僕は最高の気分を味わっていた。壊れそうな有希の表情、わなわなと振るえる身体、熱い蜜と銀色の水流をとめどなく流し続ける女芯……全てが、僕の最高の戦利品だった。
「う……あぁ、あぁぁ……」
有希の声にも、次第に理性の響きが無くなっていく。意味を成す言葉が出なくなり、代わりにケモノのような叫びや呻き声が白い喉を震わせていた。
「さぁ、有希。僕のコレで掻いて欲しいかい? コレなら、有希のその疼きを鎮められるんだよ……」
そう言いながら、僕は自分の怒張したモノを露出する。食い入るような有希の視線が絡みついた。
「う、うぅ……」
有希の表情はめまぐるしく変化した。焦り、屈辱、恐怖、欲情──浮かんでは消える様々な表情が、有希の切羽詰った内面を窺わせている。
僕は悪戯心に、有希のクリトリスを筆先でつん、とつついてやった。
「……っ!!!」
それだけで、有希の腰は跳ね上がる。
(もうすぐ限界だな……)
僕は有希の耳元に口を寄せ、囁くように言った。
「3分間待ってやる。それで答えられないなら、もう僕はこの部屋に来ないからね──有希が、本当に狂うまで……」
「──────っ!!!」
有希の混乱は、もう限界を迎えようとしていた。
◇
有希は気の遠くなるような思いで、必死に肉体が訴える疼きに刃向かっていた。
こんな……こんな奴に屈するなんて、死んでも嫌!!!
その思いだけが、有希の精神をぎりぎりのところで屈服から留めていたのだ。
……でも、もうそれも随分前の事になる。
──ああ、ああああ、もう、もう……もう、だめ……だめだよぉぉ……
もう、有希の頭の中は無茶苦茶になっていた。頭の中ですら、理性的な言葉を組み立てる事ができないのだ。
自分の口が勝手に屈辱の言葉を口走ってしまっても、不思議ではなかった。声が出ないように自分を抑える事など、とうの昔に出来なくなってしまっていたから。
もう、耐えられない。逃げられない。徐々に徐々に、少しづつ──有希の精神を、絶望が蝕んでいた。
『……だから、大人しく従った方がいいって言ったのに……』
焼き切れそうな有希の心に、冷ややかな声が響き渡った。──もう一人の、自分の声だ。
『もうまともな事、考えられないんでしょ?』
頭の中はとっくにオーバーフローしている筈なのに、何故かもう一人の私は平静を保っていた。
──だめぇ、もうだめぇぇ……
『下手にプライドが高いのが裏目に出たわね……もう、従うしかないのよ』
声に、哀れみの響きを感じた。
──でも……やだ、死んでもやだ!!
『そうやって意地を張って……まだこんな酷い事続けたいの?』
──だって、だって……
『バージンだけは護りたいの? もう無駄よ。今までどんな事をされてきたか覚えてる? もう元には、戻れないのよ』
──うぅ……
『どうせ奴は、次の手もその次の手も考えてるわよ、きっと。そうやって我慢すればするほど奴を喜ばせるだけ……分からないの?』
──うぅ、ううぅ……
その時、異質の刺激が──身の毛もよだつ痛みと、待ちに待っていたあの部分への刺激が、同時に襲い掛かってきた。
──!!!
『ほら──来た』
◇
「ひぃあああああーーーっ!!!!」
宙空を見つめて呆然としていた有希は、突然その刺激を受けて、身体ごと跳ね上がった。
白い喉から、絶叫が迸る。
ちくり、ちくり、ちくり──
有希を叫ばせたその道具は、小さな針だった。
「ほらほら、もう時間は半分も無いよ」
「ああっ、ああっ、あああああっ!!!!」
薬の所為で腫れ上がり、赤く充血しているその部分を、針はゆっくりと刺していく。
「うわあああっ、あああああ!!!」
大陰唇を、小陰唇のヒダを、膣口を、クリトリスの包皮を──出血しない程度の強さで、しかし執拗に、針は有希を攻め続けていた。
有希の身体は小さな痛みに跳ね回る。敏感な部分を襲う痛みと、そして痒い部分を刺激される快感と、その刺激が全然足りないもどかしさに。
「ああ、あああぁぁ、ああぅぅ……」
びくん、びくんと絶頂の痙攣を起こすように、有希は全身を震わせていた。
針で突付かれる度に、自分の理性と意識が薄れていくのが分かる。もう痒みと刺激、それしか有希は考えられなかった。それだけが有希の頭の中を占め、焼け付くような炎となって精神を焦がしていく。
そして針先が、包皮からすっかり顔を出していたクリトリスを刺した瞬間──。
ちくり。
「うああああああああああーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
有希はケモノのような絶叫を放っていた。
◇
──だめ、だめ、こんなの、だめ……
『もう……駄目ね……もう……我慢、できない……』
もう一人の有希の声が、突如その声色を変えた。
──ああ、あ……
『欲しい……刺激が、欲しいよ……』
有希の頭の中で、唯一冷静だったその声にすがっていた有希は、なす術もなくその言葉に巻き込まれていく。
──だ……め……
『もうあの醜い物でもいい……私を、掻いて……』
──だめぇぇぇっ!!!
『掻いて、掻いて……』
有希はその声に、必死に抵抗しようとした。だが彼女も極限の状態にいる中、自分の内側から攻められてはひとたまりもない。
──あぁ、あ……
『掻いて……掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いてぇぇぇっ!!!!!』
──うわぁ、あぁ、あ……
外から与えられる狂おしいまでの疼き、そして頭の中ではもう一人の自分が、甘美な響きの言葉で有希の抵抗を萎えさせた。
『掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて掻いて……』
──あぁ、あ、ああぁ、あああぁぁ、ああ、ぁ……
◇
そして。
「あぁ、あ、お願いぃ、おねがい、掻いてぇぇっ!!」
有希は自ら、屈服の言葉を叫んでいた。
もう少し続きそうです。