──小島有希(11)──      作:SYARA


 ──全てを、奪われてしまった。


 私は薄い薄い、消えてしまいそうな思考の中で、静かに絶望を噛み締めていた。


 とうとう、バージンまで……。

 ……好きな人に、もらってほしかった。
 まだ男の人を好きになった事はなかったけれど、お兄ちゃんみたいな素敵な人に……。
 ううん、できるなら、お兄ちゃんに……。

 そのために、必死になって耐えたのに……。
 絶対に守り通したかったのに……。

 奪われてしまった。
 卑怯な手で。

 屈してしまった。
 あの、気の狂いそうな責め苦に。
 自分から、あんな言葉を口走って……。

 今もテレビに映っている、私の痴態。
 首輪の鎖は、テレビの場所までは届かない。スイッチを切ることもできず、一人きりの地下室には大音量で自分の喘ぎ声が響いていた。
 口走ってしまった言葉、感じてしまった身体。
 過去の自分が、モニターの中から非難の視線を送ってくる。

「……」

 もう、死んでしまいたかった。

「……」

 現実感が無い。今はもう兄の顔さえ、よく思い出せない。

「……」

 何もかも、どうでもよくなっていた。
 生きていればそれだけ、あいつは私を汚すだろう。
 そして、くやしいけど私は、あいつの思い通りにされてしまうだろう。
 あいつを喜ばせるだけの人生なんて、いっそ……。

 それに。

 私は奈落の底に突き落とされるような思いで、記憶を辿った。
 赤ちゃんが──出来ちゃったかも知れない。
 中で、射精されてしまったから。

 あいつと私の、子供が生まれる。

「いやぁ……」
 考えたくなかった。
 でも、あれから何日経ったのかよく分からないが、そろそろ生理が来る頃のはずだ。
 一番危険な時期だった。
「うっう……うぅ……」

 死にたい──

 でも、死ねなかった。
 ベッドのシーツを首に巻き、ベッドを立ててもう片方を結び付け──
 いざ死のうとすると、怖くて足が動かない。
 怖い──そう、怖いのだ。
 死ぬことが。痛いことが。苦しいことが。
「う……」
 情けなかった。こんな自分が。
「うっ、う……」
 結局はあいつの手の中で踊らされている、自分自身が。
「ううう、うぅ……ぐす……」
 結局私は、眠ってしまうまで泣き続けた。



 自殺を試み、断念する様子を、僕は複雑な思いで眺めていた。

 調教は順調──と、言えるのだろう。
 だが……。有希は未だに、快楽の虜になろうとはしていない。
 普通の少女なら、とっくに現実から逃避して快楽の世界に溺れているだろうに……。
 彼女の精神力とプライドの高さには、驚かされるばかりだった。

 そしてその精神力故に、自ら死を選ぼうとした。
 少女を追い詰めて、死なれてしまっては元も子もないのだ。

 かといって、強制的に自殺を禁じて束縛するのは嫌だった。
 ──更に徹底的に、快楽を刷り込むしかないか……。
 処女を奪った夜からもう丸二日が経っている。
 薬の腫れも破瓜の傷も、何とか落ち着く頃だ。──もうそろそろ、次の調教を行ってやる事にしよう。
 僕は、有希にどうやって快楽を与えるか、地下室に向かいながら考えていた。

 その表情を、次第に思慮から嘲笑へと変化させながら……。 



 自分の痴態を延々と見せられ、その喘ぎ声を聞かせられ、有希の心は恥辱と絶望の内にある。

 だが、有希の身体は、その精神とは違う悩みを抱えつつあった。
 攫われてから数日、殆ど休む事なく与えられた快感の渦に、有希の身体は慣れてしまっていた。
 そうする事で、有希は無意識にこの困難を乗り越えようとしていたのだ。

 だが──。

 処女を奪われて以来、二日間、男は指一本彼女に触れようとしていない。
 快楽の内にいる事に慣れてしまった身体は、それを不服と感じてしまったのだ。

 欲求不満。

 少女が抱えるには早過ぎる悩みに、有希は知らず知らずのうちに追い込まれていく。
 認めなくなどないだろう。
 自分の身体が、汚され、玩ばれただけではなく、その快感に慣らされ、快楽を欲するようになってしまったなどとは。
 卑劣な男の思うがままに、堕ちてしまっているなどとは。

 純粋な輝きを持つ精神と、淫靡な快楽に目覚め始めてしまった身体──。
 激しいせめぎ合いが、有希の内部で起き始めていた。 



 身体が火照り始めている事に、疼き始めている事に、有希自身も気づいていた。
 破瓜の痛みはまだ続いている。
 それなのに、身体の奥底から湧き上がるような衝動が、とろとろと彼女の身体を焦がしているのだ。

 ──だが、どうする事もできない。

 自分を慰めて、その火照りを鎮める事はできる。
 だが、屈辱よりも死を選べなかった有希の、中途半端なプライドは、ここでも彼女自身を追い込む枷になった。
 過去の痴態を大きく映し出しているモニターの上には、ケーブルに繋がったままのビデオカメラが回り続けていて、休む事なく少女の姿を記録している。
 身体の疼きに負けてオナニーをするなどという、屈辱的な光景を見せる事など、出来るはずがなかった。

 どうしてだろう……。
 どうして、こんな事になったんだろう……。
 有希は悔恨と恥辱に震えながら、ただ眠気が来るのを待つしかなかった。
 大音響で響く過去の出来事に、身体が勝手に反応しようとするからだ。

 眠りだけが、今や彼女の唯一の救いだった。



 ぎい……

 軋みながらドアが開き、有希の体臭がむわっと立ち込める。
 エアコンがあるとは言え、広い地下室を全てカバーし切れてはいないようだ。

 ドアの音に反応する事もなく、有希はベットに丸くなって眠っていた。
(よしよし……)
 眠っている有希に、僕はそっと近づいていく。
 疲れとショックに深い眠りに落ちているのか、有希は僕が顔を覗き込んでもぴくりともしなかった。
(さて……)
 僕は素早く有希の両手に手錠をかけ、ベッドの頭部分のパイプに引っ掛ける。
 そして、全裸のままの両脚を広げ、膝の裏に長い棒を通して膝に固定した。これで有希は、脚を閉じる事もできない。
(筆は飽きたな……また、アレを使ってやるか)



 有希は、身体を突き抜けるような快感に目を覚ました。
「……!?」
 驚きに見開かれた瞳に写ったのは、乳首に貼り付けられた2つのローター。
「うぅ……」
 両手にかけられた手錠を頭上で固定され、両脚はロープで横に渡した棒に括り付けられて、大きく開かれてしまっている。
 眠っている間に反応してしまったのか、乳首はもう勃起を始めてローターを押し返し、その刺激をどんどん鋭くさせていた。
「やぁ、起きたかい?」
「……!!」
 有希は、男をただ黙って睨み返す。みるみるうちに頬に血が上っていった。
「寝ている間の方が素直だね……うン、んんっ……なんて、可愛い声で鳴いていたのに」
「く……!!」
 低い振動音のうねりと共に、有希のお腹がぴくぴくと引き攣り、はぁ、はぁっ、とため息のように空気が吐き出される。
 ──有希は必死に、刺激と戦っていた。
 涙をためた瞳をぎゅっと閉じ、なんとか込み上がる感覚を感じまいとする──が、それも無駄な努力だった。
「くっくっく……ムリしないで素直に感じれば良いのに……ほら、これでどうだい?」
「くぅ、う、う……あ、あ!!」
 そう言って男は、3つ目のローターを有希のクリトリスへと突きつける。
 腰が、跳ね上がった。
「ああ、いやぁぁ、いやぁぁぁぁ……」
 開発されてしまった有希の躯は、以前よりもまた鋭さを増して有希に快感を叩きつけていく。
「うあ、あ、あああっ……」
 それはもう、抗う事などできないほどの、快楽の奔流だった。
 有希はただ、その圧倒的な勢いに翻弄され、いいように舞い上げられていく。
「あああっ、ああああっ、ああああああぁ……」
「くっくっく。もう簡単にイッちゃいそうだね……でも、それじゃあまり面白くないな──そうだ、このテープをキミの知り合いの誰かに届ける事にしよう」
「────!!!」
 3ヶ所からの振動に攻められて、ちりちりと灼けるような頭の中で、有希は恐慌に似た状態で我に返った。
 目の前には、ただ冷静に有希の姿を撮り続けるビデオカメラ。
「いやぁ……っ!!」
「そうかそうか、嫌なんだね……じゃあ、イッちゃう姿を見られないように頑張らないとね」
 男の猫撫で声が、嗜虐の悦びに震えていた。
「やめ……っ、やめて……ぇっ!!」
 有希は身体中で、何とか拘束から逃れようともがき始める。
 だが、それも男の悦びを増長するだけだった。
「ほぅらほら、もうお腹がぷるぷる震えてるよ。──気持ち良いんだろう? イキたいんだろう? もう有希は、昔のキミじゃあないんだからね、くくく……」
「嘘、だぁ……っ!!」
 有希の抵抗に、男はますます笑みを広げてそう言った。
「ほら、カメラの向こうのお知り合いにも教えなきゃね──もう何回イッたと思ってるんだい? 僕の指で、舌で、このローターで──」
「いやぁ……っ!!!」
 汗を含んだ髪を激しく振り乱し、有希は現実を認めまいとするように叫び、暴れる。
「否定したって無駄だよ。何せこれまでの一部始終は全てテープに収まってるんだから──何なら、それも一緒に送ろうか?」
「くぅ……うぅぅ……」
 恥辱に塗れた有希の顔に、男はゆっくりと顔を寄せた。
「有希、キミはもう戻れない──キミは僕に処女を捧げて、僕の性奴へと生まれ変わったんだ。今更抵抗したって意味が無いよ」
「うぅ……いやぁぁ……」
 有希は弱々しく首を振る。
「さぁ、カメラの前でイクんだ──キミが僕の所有物になったという事を、みんなに見せてやろう」
「やだ、やだぁぁ……お願い、やめてぇ……」
 目の前に突きつけられた現実と、彼女を内側から震わせる快感。有希は哀願していた。
 プライドもアイデンティティも、もう彼女を守ってはくれないのだ。
「ふふ。可愛くお願いができるようになったね……でも、ダメだよ。有希は僕の性奴として、カメラの前でイカなくちゃいけないんだ」
「いやぁ……いやぁぁぁ、お願い、お願いぃ……うあ、あ、あ!!!」
 海老反りに仰け反る有希。男はその様子に目を細めながら、はちきれそうに充血している乳首をローターごときゅっと捻り上げた。
「くぁぁぁぁっ!!! やだ、やだぁぁ、やめてぇぇ……」
 有希の身体は過剰なまでに反応し、その刺激の強さを物語っている。
 背筋がぶるぶると震え始め、瞳は光を失っていき、腰は妖しくゆらゆらと踊り始め……。
 全身からうっすらと汗が噴き出し、てらてらと妖しい光沢で有希の身体を彩っていた。
「はぁ、はぁ、はぁぁ……も……う、もう、ダメ……」
 うわ言のように呟きながら、その声を少しずつ、上ずらせていく。

 そして──。
 とうとう有希の身体に、限界が訪れた。

 3つのローターの振動に加え、男の指先が有希の身体を這い回り始める。
 脇腹、首筋、太もも、会陰──。
 2日の間にようやく炎症を収めた女芯は、再び爆ぜるように充血してしまっていた。
「やめてぇ、もう、やめてよぉ……」
 勝気だった有希の抵抗も、今はもう哀願に成り下がっている。どうあっても逆らえない物がある事を、ようやく理解したのだろう。
「可愛い声だよ、有希……ふふ、そんな泣きそうな顔をしないで」
「やぁ……ッ!!」
 耳元の声と息に、再び有希の体が跳ね上がる。その表情は泣きそうと言うよりは──悩ましい、と表現されるべきだった。
「ふふふ……相変わらず耳が弱いようだね……ほら、もうイキそうじゃないか」
 ふーっ、ふーっ、ちゅ……ちゅ、ちろ、ちろちろちろ…… 
 揶揄しながら、有希の耳を徹底的に弄り回す。
 息を吹きかけ、軽くキスをし、鳥肌が立ったところを嘗め回し──

「いっ、いやあっ、いやあーーーっ!!! ──ああ、ああああああああああああああ!!!!!」

 びくんっ!! びくん、びく、びくん――
 それだけで有希は、あっさりと絶頂を迎えてしまった。
「あぁ……あああぁ……」
 まだ目を覚ましてから10分経たないうちに、有希は身体中で悦びの震えを訴えながら、果てたのだ。
 びくん、びく、びくん……
 戦慄きながら、かくん、かくん、と上下する腰が艶かしい。
「ふふふ。いいイキっぷりだったよ、有希……これを見る人も、とても満足するだろうね」
「あぁ、ぁ、ああぁぁぁ……」
 愉悦に震える身体の中で、有希は必死に兄の顔を思い浮かべ、心だけは流されまいと歯を食いしばっていた。
 ──絶頂を迎える寸前にやっと思い出せた、愛しい兄の顔を。
 だが、それさえも──。今や有希を切り刻む、刃と化してしまっていた。
「見……ないで、お兄ちゃん……」
 兄にこんな姿を見られるくらいなら、死んだ方がましだ。
「お願い、お兄ちゃん……」
 有希はかすれた声で呟きながら、次第にその瞳の光を失っていった。

◇ 

(……今度は、思いっきり撫で回してやろうかな) 
 痙攣を続ける有希を見下ろしながら、僕は次の調教を考えていた。
 快楽に蝕まれる少女の表情。
 理性という最後の綱を削られていく、歓喜の表情。
 ──そう、有希は気づいているのだろうか。
 自分が今、悦びの表情を浮かべているという事に──。

 溜まらない。
 溜まらなく、気分が良かった。
 自分の思うがままに、堕ちていく少女。
 思うがままに泣き、叫び、悦びに泣き咽ぶ。

 そして、これだけ汚されているというのに、まだ自分を失わない心の強さ。
 そしてその心を裏切るように、どんどん快楽に目覚めていく身体。

 何もかもが、最高の少女だった。
 この少女を好きにできるという今の幸運に、神に感謝してやりたいくらいだ。

 ──こうなったら、徹底的にやってやる。
 何人かまだ、捕まえたい少女がいたが、そいつらは後回しだ。
 高貴な魂を持ちながら、攻められれば結局は咽び泣きながら服従を誓う、最高の雌奴隷に──

 何としてでも、仕上げてやる。


 
「さぁ、今度はマッサージだよ」

 汚らわしい手が、また、近付いてくる。
 穢される──また、あの男の手で……。
 悔しかった。憎かった。殺してしまいたいくらいに。自殺してしまいたいくらいに。
 でも──。
 さわ。
「…………っ!!!」
 手が触れた瞬間、私は確かに「嬉しい」と感じていた。
 触れられた処から波紋のように、気持ち良さが広がっていき、たまらなく疼くようになるのだ。

 ──もっと、触って欲しい、と。

 憎らしいのに。殺したいほど憎いのに。
 触れられた瞬間に、全ての意思が萎えてしまう。
 必死の思いも、身を焦がすような怒りも、まるでか細いガラスのように砕け散ってしまう。
 まるで、それらの全てが嘘であったみたいに……。

 すぅっ、すっ。
「はぁっ、あっ!!!」

 撫でられる度に、鳥肌が立つくらいの戦慄が私を痺れさせていく。
 気持ち良い、気持ち良い──まるで雲の上にいるような気分だった。
 もう、男を憎む気持ちも、ここまでされてしまった悲しみも、頭の片隅に追いやられてしまっていく。

 抗えなかった。
 どうする事もできずに、快感の波に飲み込まれ、私は小さな木の葉のように翻弄されていく。
 まるで電気が彼の指から放たれているみたいだった。電気ショックを受けたみたいに、私の身体は快感に仰け反る。
 欲しい、もっと欲しい──高まっていく身体の疼きに導かれるままに、私はどんどん快感にのめり込んでいった。

 きゅっ。
「きひぃ……っ!!!」

 軽く乳首を摘まれただけで、私は身体を仰け反らせて喘いでしまう。
 手も、足も、耐え切れない程の快感に、ぴん、と突っ張っていく。
 たちまち、乳首は硬さを増して勃起し始めてしまった。

 くりっ、くりっ、くりっ……
「いぃぃ……いやぁぁ、いやぁ、やめてぇ、やめてぇぇ……」

 快楽という名の稲妻が、頭の中を真っ白に染めていく。
 軽く軽く、羽根のような軽さで転がされ、あっという間に乳首は屹立してしまった。
「あぁ……」
 天井を向いて硬く勃起した乳首を見て、恥ずかしさが込み上げる。
「感じてくれてるんだね……嬉しいよ、有希……」
「うぅ……!!」
 耳元に熱い息がかかり、思わず顔を背けた。
 だが、ざわりと蠢き始めた戦慄は止めようもなく、私の意識を痺れさせていく。
 耳元に息を掛けられただけで、こんなに……。
 私は恐怖にも似た慄きを感じていた。
 今まで自分の一部だと固く信じていた身体は、今や私の意図を全く無視し、快楽と戦慄と、疼きを訴えている。

 ──私は、彼に変えられてしまったのだ。

 もういい。もう、どうでもいい──。
 プライドを捨て、捨て鉢になっていく私の心に、快楽は甘い麻薬のように染み込んでくる。

『そうだよ……それでいいの……』
 頭の中に、もう一人の自分が響く。
 うれしそうな、声。
 白濁しかけた意識の中で、その声だけが、やけに鮮明だった。

『……ねぇ、もう無駄な抵抗は止めよう? ……快楽に身を任せて。ほら、気持ち良いでしょ?』
 死ぬほど汚らわしかった筈の、もう一人の自分の言葉は、今、とても魅力的に聞こえた。
『そうそう、何も考えなくていいんだから。ただ気持ち良い事だけを考えていれば、天国にいるように気持ち良くなれるよ……』
 そうだ、もう考える事なんてない──そう思ってしまえるほどに、その愛撫は気持ち良かったのだ。

 優しく、優しく──しかし的確に、彼は私の身体を舞い上げていく。
 理性や意識の鎧を剥がされていくように、私は快楽の虜になっていった。

 彼の指先が脇腹を下れば、目の前が真っ白になる。
 するりと秘部を撫で回せば、身体中に鳥肌が立つ。
 そのままぬるりと、私の内部へと滑り込めば──
 気の遠くなるような気持ち良さが、私の身体を突き抜けていた。

 頭の中が、真っ白に、犯されていく。
 何も考えられない。ただ真っ白に塗りつぶされて、快感だけが私の思考に満ちていく。
 腰が、私の意思を無視して勝手に動き始めた。

「あ、あぁっ、あああっ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁ、あぁ、ああぁ、あああぁ、あああああ…………」
 閃光が頭の中を突き抜ける。ちかちかぁっ、と火花が散る。私は、もう呼吸する事さえ忘れてしまっていた。
 信じられなかった。私の身体が、こんなになってしまうなんて……。

 舞い上げられ、迸る瞬間、私はぼんやりと考えていた。
 わたしが……。

 ……わたしが、こんなに、インランになってしまうなんて──



「かっ…………はぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 指先が滑り込んだ瞬間、有希はひときわ高い声を上げてイッてしまっていた。
 軽く身体を撫で回し、乳首を弄り、膣口に指先を差し入れただけで、有希は絶頂を迎えてしまったのだ。
「ああ、ああぁ、ああああ……」
 絶頂にわなわなと震える膣内を、しかし指先は構わずにつぷつぷと突き進んでいく。
「はぁ、あ、やめ、やめてぇ……」
 しおらしく哀願する有希。だが男はそれに、嘲笑で答えるだけだった。
 ふるふると可愛らしく全身を震わせ、目に涙をいっぱい溜める――縋りつくようなその雰囲気に、かつての勝気な少女の面影は欠片も見られない。
「あぁ、あぁ、ああぁぁ……」
 恥辱も憎しみもかなぐり捨ててしまった今、この少女の中にあるのは単なる羞恥──。
 目の前の男にあられもない姿を晒してしまうという、原始的な羞恥心だけだった。
 何も知らない幼い頃のように、ただただ恥ずかしいという感情だけが、頭の中を占めていく。

 ずぷ、ずぷ、ずぷ、ずぷ……
「ああぁ、また、またぁ……」

 そして、次は何をされてしまうんだろうという漠然とした不安と共に──。
 次はどうなってしまうんだろうという、期待にも似た戦慄が、生まれ始めていたのだ。

「はぁ、はぁ、はぁああっ、あ、あ──」

 ──少しずつ、少しずつ。

 ずぷ、ずぷ、ずぷ、ずぷ……
「ああっ、あああっ、あああああ!!!!!!」

 ──たが、

 ずぷずぷずぷっ、ずん、ずんずんずん……

「あ・あぁ……またぁ、またぁぁ……あああっ、あああああああーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 ──確実に。



 イキ狂いの嵐に翻弄され、有希は十数回にも及ぶ絶頂の末、気絶した。
 拘束を解かれた今も、弱々しい痙攣を繰り返しながら力無くベッドに身を投げ出している。

「くっくくく。また、いいモノが撮れたよ、有希」
 とっさの機転にしては上出来だっただろう。有希は、軽い絶頂だけでは終わらなかった。
 最後の最後まで抵抗し、そして全てを打ち砕かれ、絶望的なまでの絶頂に踊り狂ったのだ。

 優しく、その頬を撫でてやる。
 やはり、理性が残っているというのは良いものだ。こうして、何度も何度も彼女の恥辱を眺められるのだから。
 僕は柔らかな髪を指に纏わせ、優しくついばむようなキスをしてやった。

「さて……天国の後は、地獄を味わってもらおうかな……」
 ぴく、と有希の目蓋が動く。
「今の君がいかに『幸運』なのか……、徹底的に教えてあげよう……くっくっく……」



 なんだかもう少し進む予定